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[コメント] ガメラ対大魔獣ジャイガー(1970/日)

最も“ガメラ”らしい作品とは、実は本作なのかも知れません。湯浅憲明監督追悼。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 東宝シリーズの『ゴジラ』と大映による『ガメラ』これらは日本の特撮界における二大スター怪獣と呼ばれる。ただガメラの場合、後発と言うこともあって、ゴジラとは多少違った位置づけがなされているのが特徴。その中でも本作は最も“ガメラらしい”作品と仕上がっている。

 何が“ガメラらしい”のか。単純である。ガメラとは、徹底して子供の味方なのだ。そしてそれに合わせ、子供も又、ガメラのために働く…いや、子供はガメラとの友情で動くのだ。

 この徹底して子供の視線で描くと言うのは大変重要な点となっている。子供だからこそ、ガメラの優しさが分かるのであり、子供だからこそ、どれほど危険な任務も、“友情のために”動ける。

 これが大人だとそうはいかない。怪獣は絶対的な味方には成り得ないから。どこかにそこには打算が生じる。それは『ゴジラ』のシリーズを観ても明確化している。ゴジラは人間の味方をする“こともある”で留まる。だからこそ人間の側は、ゴジラの機嫌を窺うとか、あるいは『怪獣総進撃』(1968)に見られるように、怪獣を管理しなければならないと考える。平成シリーズになると最早、ゴジラは最早単なる暴れん坊であり、ゴジラに他の怪獣をぶつけるか、あるいはゴジラを他の怪獣にぶつけると言う単純な図式しか作れなくなってしまった。

 確かにこの作品にも大人は登場する。だが、その大人の視点はどうか?やはりガメラもジャイガーも同じ怪獣としてしか見ていない。子供だけがガメラが絶対的な味方であることを知っているのだ。

 それに怪獣映画を語る上で、大変重要な点がもう一つ。人間ドラマと怪獣の戦いはスケールの違いから断絶しやすいと言う点が挙げられる。一般には人間ドラマが展開していく一方で、怪獣同士のどつきあいが語られることが多いのだが、この場合、二つの物語が乖離しやすいと言う難点を持つ(これが監督と特技監督を分けてしまったことによる部分もある)。「ウルトラマン」シリーズで活動時間に制限を加えたのも、このためだろう。いくつかの作品でそれをクリアしているが、『ゴジラ』と『ガメラ』を較べてみると、圧倒的に『ガメラ』の方がよく考えられている。本作では何せ、子供がガメラの体内に入っていくのだ。これほど二つのドラマを同時に展開する良い方法があろうか。スタッフはそこまで考えていたかどうかはともかく、画期的要素をこの作品は指し示していたのは事実であろう。

 …以上の如く、設定の上では非常に優れた作品ではあるのだ。ただ、その設定をストーリーが生かし切れたかどうかと言うと、やっぱりなあ(笑)。万博とタイアップしたが故に物語に無理や行き過ぎがあるし、国際色豊かな子供の演技がどうしても棒読みだった。物語が進めば進むほど、笑いの要素が強まっていくガメラとジャイガーの戦いなど、問題がありすぎて…

 あれ?実際のレビューはこれだけ?(笑)

(評価:★3)

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