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[コメント] スモーク(1995/日=米)

嬉しいですね。観終えた後、ふっとタバコを吸いたくなるような余韻を残してくれました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ポール=オースターの短編を彼自身が脚本化。ユーロスペースと日本ヘラルドが出資し、香港出身のウェイン=ワンが監督という国際色豊かな作品に仕上げられた。ちなみに日本人が製作の最初から参加した外国映画で大きな賞を受賞したのはこれが初めて。

 話そのものは人情話なのだが、観ている間すっと心に入り込んできて観終えた後も余韻が残るような感じで、小津に代表される良質の邦画を舞台を変えてみている気にさせる。実際本作はこれと言ってドラマ性が高い訳でもないし、煙草屋の片隅で何気なく語られている与太話がどんどん拡大していく感じなのだが、その日常性の(しかも結構な駄目人間の)描写が特に優れてる。

 何気ない日常の中にもドラマがある。それはどこの国でも同じだし、それぞれの国で固有の物語ってのが存在する。日本なら日本だけの、アメリカならアメリカだけの物語。雰囲気は日本的でも、やはり舞台変わると全然物語が変わってしまう。アメリカ、殊にブロンクス辺りだと、軽犯罪は日常的だし、そこに住んでいる人はそれにどう関わっていくか。それらを受け入れつつ、その中で良い部分をいかに抽出するか。

 本作の場合、その日常が盗みと嘘という言葉で表されるだろう。どれだけ嘘をつかれてもそれはそれで仕方ない。というあきらめもあるし、嘘はいけないと子供に教えるのも大人の務め。その境界を「ま、いいか」で終わらしてしまうのが、妙に印象に残る。その駄目っぷりが愛おしい。

 この雰囲気を作り出したのが人種のるつぼと言われるブロンクスの雰囲気であり、これほどアメリカの中心を描いているのに、どこか突き放して見ている製作側の巧さだろう。アメリカ人でないからこそ撮れた作品とも言えるだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Myurakz[*] みか[*]

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