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[コメント] 埋もれ木(2005/日)

解らないのにこころを揺さぶられる
ina

雨に濡れた路面に反射する広告トラックのくじら。家を少しずつ移動する「曵き家」。学校の窓から見える木々。理解できなくてもこころが揺さぶられる映画的なシーンが多い。ただ骨となる現実的な話の流れが小栗独自の映画的哲学で溶けてなくなっている。骨抜きの宙に浮かぶくじらのように。理解することを拒否してただ感じるだけしか我々に与えない。それは映画表現としては良いかもしれないが映画を見せる立場、観客側からではいささか損しているように思われる。田舎にあるコンビニ「ミニストップ」だけがかろうじて現実的な地面に我々を立たせる。昔の小栗作品「泥の河」「死の刺」では現実的なリアリティと映画的な表現ががうまく融合していた。晩年の黒澤明のようにどんどんと自分のファンタジーの世界に行ってしまうような気がする。圧倒的なリアルな物語の上にこの最高レベルの映画的表現が重なれば現実なんて消し飛んでしまう圧倒的な作品ができるのに残念だ。しかしそんな欠点(特徴)を持ちながら近年の邦画の中で一番スリリングだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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