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[コメント] ブラインドネス(2008/カナダ=ブラジル=日)

次第に盲人なんだかゾンビなんだか分からなくなってくる。スーパーのシーンなんてモロそれ。つうかオマージュ?
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







といった感じで、新機軸を打ち出しているようで、至るところで既視感を覚えてしまう。映像表現をとっても、良い悪い以前に、個人的にはむしろどこか古臭い、と思った。加えて、時間経過の省略の表現が、全体の雰囲気にむしろそぐわない気もした。安易に早回しすると、場の空気がイマイチ煮詰まって感じられない、と言えばいいのか。

音に関して言えば、視覚を奪われた世界においては、より聴覚が研ぎ澄まされる、ということを感じさせるように、わざと耳に障るように音を扱っている。そのアイディアは面白いとは思う。しかし、それにしても、ほぼなりっ放しな音楽をはじめとして、全体的にうるさくないですかね。盲人が静寂を恐れ、それを埋めるかのように、映画が音で溢れかえるのはアリなのかもしれないけど、その根底にある静寂への恐怖が描かれてなければ、ただうるさいだけかと。ちなみに個人的には、イチイチな映像表現にもややうるささを感じてしまった。

筋書き的にはどうなんだろ。「もし視覚が奪われたら」ということで考えられることが描かれつつ、中盤までは果たしてどう話が転ぶか予想できずに見守っていくと、終盤に至って、「ああ、要はコレなんだ」という(コレまた)既視感。混乱→業火による浄化→新世界の到来。意図してかどうかは知らないけど、まあ信仰のシーンなどもあるので、黙示録的な話の骨格と言ってしまって良いかと。

しかしそれにしたって、「心の目を開けば、自ずと新しい世界も開けます」なんて、それまでの汚辱に満ちた収容所のシーンの描写の前では、やや陳腐ではないですかね。そもそも、人を殺めることに対する葛藤が、「罪深き人は自らの火に焼け死ぬ」で終わってしまうのが、精神的な土壌の違いなのかイマイチ感覚的に馴染めない。むしろ個人的には、そこに対する葛藤や精神の変容みたいなものが見たかったし、善意や寛容の限界を中心に据えたが面白くなったのでは、と思う(でもそれじゃ盲人の話である必要ないか)。

(2008/12/8)

(評価:★3)

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