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[コメント] 孔雀 我が家の風景(2005/中国)

文革後のひとびとの暮らし、営みを大河のようにじっくりと描く中国映画の真骨頂。スタイルとしては特に新しいわけではなく、どこか中国というより台湾映画のタッチを感じるセンスを持っている。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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茫々とした人生の流れ、よどみもあれば急流もある。そんな当たり前のごく普通の人々をカメラに収めている。

3人の子供をそれぞれパート別に描き、それぞれが輻輳していく演出方法は、散文的でそれぞれの心情が観客に沁み渡り的確だ。最初の羽ばたきたくて仕方がない長女の空への思いは、青春そのものの悲しさを十分窺わせる素晴らしいシーンが多い。

生まれた所からどこにも行けなく、気持ちだけは遠くへ行きたいという思いは誰にでも経験のあるところ。そんな、自由への憧れを大きな青空、また青い落下傘をこぐ自転車に託す長女。解放されない感性は彼女を自堕落な日常へと埋没させる。そんな不確かな青春の一ページを切り取りこのパートは特に秀逸だ。

少々脳性まひ気味の長兄、姉思いの次男も障碍はあろうと、それでもそれぞれ自分の人生を生きていく。生きていけば何とか人生は開けるものなのだと映像は語らってくれる。

ラスト、それぞれの3家族の、動物園で孔雀を見ようとして結局みんな孔雀の開いたところを見れず立ち去っていくところで映画は終わるが、みんながいなくなった後で映像はじれしながらやっと開く孔雀を観客だけには見せるのである。

皮肉いっぱいの映像とも取れるが、人生ってそんなものでしょう。思いどおりにならなくても人は生きてはいけるのであります。大河であれ小川であれそれぞれたゆまない流れはあります。また、それに伴う歳月も、、。いい映画です。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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