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[コメント] 地獄の黙示録(1979/米)

外映(うちのオバアが洋画のことをこのように呼ぶので、今回使ってみました)に出てくる日本人はいつもへんてこで、吹き出しそうなのと同じに、これをベトナムの人が観ると、私らあんなに変じゃないって、むっとするんじゃない?
kazby

若い時分に観て、さっぱりわからなかった。 いいかげん大人になってから観ても、やっぱりわからなかった。 それから、何年経つのか、いいかげんオバアになりかけている今観て、つまらないと思う。 わざとらしい、鈍すぎ、そして今更あれこれ付け足したところで...っていう言葉しか思い浮かばなかった。

”この戦争は...”調で、登場人物が語っていることは、何もベトナム戦争に限ったことじゃないし、この映画が製作されたことで、戦争がなくなったわけでも、その後のアメリカがやる戦争の性質が別段変わったわけでもない。 この戦争が米国にとって特別痛いのは、負けたからでしょう。 ベトナム戦争の反省もこれまでに結構積極的に行われてきた。おそろしく不十分ではあり、しかも現在までに、”あまりに自虐的”という論調も入り乱れ、その反省色は薄まりつつあるとはいえ。(第二次大戦の反省という問題において、日本は殆ど同じ道筋をたどっていると思うんです)

カーツ大佐(マーロン・ブランド)の描き方があまりにも抽象的で、何がしたいんだ?という調子で、分かりづらいのはなぜなんだろうと考えてみた。 この映画をつまらないと思う人にとっては、この重厚なキャラクタも、どうでもいいようなものだが。

一つには、戦争の愚の象徴として見る。”こんな精鋭部隊を私が率いていたら、こんな戦争すぐ終わる”と、嘯いている。 戦争を否定するどころじゃない。もっと強い軍隊、戦争のためのもっと強い意志が必要なのだと言っている。あくまでも戦争に勝って、平和が来ると言っていると見る。

もう一つは、監督は、本当はもっとほかに盛り込みたい内容があったけれど、何か巨大な圧力が政府からかかって、台本の変更をせざるを得なかったか、上映用フィルムから、カットされた。 更に、このたびの完全版上映に当たっての編集に際しても同じ理由で、もっとも大事な部分は、挿入されなかったのでは? そして、コッポラ監督は、今もなお、政府に監視され、思うような映画が撮れないでいるのかもしれない。 とさえ思った。なんてのは、多分、映画の観すぎですね(笑)。 ただ、どんな戦争映画でも、なぜ戦争は起こるかという問題には、触れ(られ)ない。 それを正しく描こうとするなら、上映はおろか、企画段階で、握りつぶされるのではないかと思う。

長いついでに、オバアからきいた話ですが、付け加えておきます。 何を読んだのか、ベトナムのある女性外交官の話をし、必死で、抗戦する傍ら、ベトナム政府は、戦後の復興準備のためにも休みなく働いていたのだと言っておりました。 人々が住む家を建て、橋をかけ、道を整備し、病院、学校を作る。 それに先立つ、技術と、お金の協力を取り付けるために、世界中を飛び回っていたのだといいます。 彼女は、おまえもそんな立派な人になってほしかったんだよと言いたかったのですが。 年寄りの記憶で、あいまいなので、誇張もありましょうが。 そこらの富める国とは違う、”さあ、これからだ”のある国、ベトナムがなんだかうらやましいなと思ったものです。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゼロゼロUFO[*] カフカのすあま

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