[コメント] ナイン・ソウルズ(2003/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
世間から隔絶された刑務所で、「ふん詰まり」として生きていた9人立ちの男達。そして、脱獄して、塀を越えた先で探し出す希望と生きる目的。一見使い古されたテーマに思えるのだが、この作品が描き出すのは『ショーシャンクの空に』の様な希望ではなく、残酷なまでの現実。希望を見出した所で、再スタートが出来ない。しかし、カッコイイ魂たち。
松田龍平の台詞の喋り方やナレーションにはいくらでも文句はつけれるし、前作に比べてテンポが落ちて少し冗長になっている所も残念ではあるが、独特の空気、カッコよくて情けない、美しくも残酷な(マメ山田を除く)登場人物の生き様(死に様)で、俺は涙を流さずに居られなかった。
偽札王のMr.山本の「富士山の小学校のタイムカプセルの中にある偽札」を希望とし脱走した奴らではあったが、その希望はあっけなく崩れ去る。しかし、彼らは偽札が目的ではなく、本当はもっと大切な夢があった。
その夢をどれだけ果たそうと奔走しても決して果たせない残酷な現実。結婚できる訳も無いのに「出来る」と自分に言い聞かせて過去の女性の元に走るも、脱獄犯故直前で捕まる。どれだけ人を好きになろうとしても出来ず、出来たと思えば目の前で崩れ去り自分を殴りつける。自分の娘を祝おうとしても娘の方から拒否される。昔の”チンカス”に殺され、昔の暴走族の仲間に殺され・・・。犯した罪を消したくても消せないヤツらを見て居ると涙が止まらなかった。
多少アクが強すぎるギャグを垂れ流しながらも、9人(途中で一人抜けるけど)は少しずつ都会へ近づく(その途中で次々に別れていくんだけどね)。
どうも、8人の話にはとても共感できたんだが、どうも9人目、そう、松田龍平の話にはイマイチ共感できず、それが本作を心から好きになれずに居る要因だと思う。彼は、引き篭もって自ら「閉塞」の中で生きていたにも関わらず、「向かい合うことを避け」ていた癖に、「父親ヅラするヤツ」だとか「平気で裏切るヤツ」だとか、今の崩れた世界=東京=日本に文句を垂れる。
その文句の内容以前に、コイツがそんなコト言えるのだろうか?と、思う。「何でも開く鍵」を手にして最後に開いたのは心の扉だか何だか知らないが、今まで逃げて自ら隔絶された世界に生きてきた人間にこんなコト言われてもねぇ・・・といった感じ。おまけに彼の台詞の喋り方が妙に下手糞なのでイマイチ共感しきれず。
血まみれになりながら、やはり立て篭もる=引き篭もる。最終的に鍵でドアを開けるのだが、どうしても、ラストのラストでようやく鍵を開けたヤツの、あの野球場で千原(だっけ?)と話した後のナレーションにはどうしても共感できなかった。
しかし、全編に流れるこの男臭く、そしてどこか爽やかで残酷なこの空気が、ラスト(エンドロール終了後)の開放感が心地よい。多少「おいおい、やりすぎだよ」と思うギャグもあったけど、後半になるにつれ面白くなっていくのであまり気にならない・・・んだけど、さすがに2時間は少し長かった。
それに映像面でも、脚本面でも前作『青い春』には劣る気がするのが残念だったけど、それでも十分面白い作品に仕上がっていたと思う。
世間から隔絶された場所、刑務所(←引き篭もり、東京=都会と言う閉塞、等々。この映画に於いて、刑務所は現代の世界のメタファーだと思う)。そしてそこから脱獄しても残酷な現実しか待っていないのは、彼らが既に道を外した(=社会に適応できなかった)存在だからだと思う。塀の外から来た人間が塀の中に潜り込んで、塀の中の矛盾を叫んでも、塀の中で愛する人を捜し求めても、塀の中の人間からしてみれば「死刑にしちゃって、死刑に!」という感じだろう。どっちが正しいのか。
この作品は社会に適応するコトこそが良いとも、道を踏み外す事が良いとも言わない。複雑な世界。
そんな良く分らない、半ば矛盾した世界で目的を持ってがむしゃらに走る男たちの姿は、俺たちには到底超えることの出来ないカッコよさを持っていた。奴らの「遣り残した事をやり遂げる」魂は、消え行く東京=現代に生きてるどんな奴らよりも輝いていた様に思える。
俺にはこの映画、少し難しすぎたのかもしれない。その内もう一度見てみよう。
◇
二度目の鑑賞。
一度目見た時より面白かった!
テンポもそんなに悪く感じられず、結構すっきり見れたし、やっぱりこのカスなフン詰まりドモの悲痛な叫びにどうしても涙が出てしまう。松田龍平の叫びも何と無く掴めた気もする。
二度目見てよかった、って訳で点数アップ。
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