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[コメント] さよなら、クロ(2003/日)

おい!メインは一体何だ!?俺は少なくとも青春群像劇を期待していたのに。 2003年8月15日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







タイトル『さよなら、クロ』=中身=木村(妻夫木)君の結婚秘話

って、おい!

正直、俺は動物を飼う、と言う行為は好きではない。いや、一緒に暮らす、ならいいんだけど。どう違うか?まぁ考え方の違いでしょう。

で、まぁ一応今犬が居て(ラブラドール)平和に暮らしている訳なのだが、何だろう・・・この映画の予告編で俺は大泣きした。

だが、映画を見終わってそれははっきりした。映画の予告編の「クロ」に泣いたのではなく、俺はあくまで「青春をともに過ごしたクロ」に泣いたのだ。初めから結末は丸見えだった。だから、予告の段階で俺は、思い出の中にクロが居る、と言う事実を大人になった高校生は思い返して懐かしい日々を回想する、そんな青春っていいなぁとか思ってると泣いてしまったんだと思う(って俺何歳や・・・?)

だから、当初俺はこの映画に青春群像劇、あくまで「クロ」の視点から捉えられた様々な高校生の「青春」を期待していた。順調に映画は進み、クロの愛らしさがスクリーン全面に強調されるオープニング。賢くてよく主人の言う事を聞くが、主人は引越しで居なくなってしまう・・・って、おい!

そんなにクロの事可愛がっておいて置き去りか!?近所の人にあげるとかもらって下さい、とか言えないのか!?と、突っ込みを居れずに平和に見ていた。

妻夫木が最初に餌を与える。そして学校に迷い込んでくる。

俺は予告編に出ていたあのキャンプファイヤーはもっと感動的なシーンだとばかり思っていたが、流れてる音楽と感動的な炎がミスマッチでテンションダウン。

挙句、三角関係を作っておいて、片方が告白して振られた直後のバイク事故と言う月並みな展開に陥る。おい!クロはどこ行った!?と言わんばかりに、イマイチ存在感の薄いクロ。

いや、役者としての存在感は凄かった。だが、話としての存在感は薄すぎる。一応タイトルロールなんですよ?

おまけにこの後、唐突に10年経過。っておい!その10年があるから最後が生きるんじゃないのか!?と、思っていたが、ここで俺は気付いた。

あっ、これは恋愛映画なんだ。しかも、低レベルの。

まぁこの「10年後」と言う所で前半終了なのだろうが、ここまで来るのにクロはほとんど活躍しておらず、観客に「クロは学校ではこの様な扱いを受けています。」と言う、本来なら冒頭に来る事をラブストーリーに乗せて延々とダラダラと続けていたのだ。いやぁ、やっぱりこれ、『さよなら、クロ』じゃないな。

おまけに、時代設定と映像が全く合って居ない。映画館でかかっている映画で時代を表現しているつもりなのだろうが、役者が全くそれらしく見えない。おまけに、妻夫木は髪型を7:3にすると、額が広いのが見えて別人みたい。

で、後半部分。ここは多少なりマトモになるかと思えた。木村が故郷に戻ってきたらクロの容態が悪い。宿直室を見ると、見回りのおっさん(今の時代、全て機械警備だからか、劇場に多く居たガキにはこの光景が理解出来なかったのでは?まぁそういう自分も、小学生の時に機械警備に切り替わったからあまりお世話になってはいないのだが)がクロを可愛がっていた事がわかる。

ここで、初めてクロにドラマが生まれる。いや、ここで初めてクロにドラマが生まれる事は良いのだ。だって、本来のこの作品は、クロの主観から描き出される青春群像劇であるべきなのだから。だが、話はそちらに進まない。

描き出されるのは延々と下らない陳腐なラブロマンス。確かに不器用な男女が過去に死んだ友人(こいつ、演じている役者はいいのに、役としてはクロ並に存在感薄い)の事を考えながら少しずつ互いに近づいていく訳だが、もうどうにでもなってもいい程つまらない展開。

挙句、クロの手術ときたもんだ。ここで、なぜかクロと全く関わっていない奴らがクロに対する募金を始める。いや、説得力薄いって。

さらにクロが担任した後、シーン変わって再び電車内の木村。ここで妻夫木の声により木村の独白台詞が入る。そう、やっぱりこの映画の主役は木村だった。妻夫木だった。所詮アイドル映画だった。

クロは死んだ。

っておい!

頭がおかしいのかと思う、この脚本家。だって、ここまで延々と木村の安っぽい恋愛話に絡ませながら微笑ましいエピソードを羅列しただけのクロの「ドラマ」(らしい物は全く見られなかったが)を完結しやがったのだ。

どうやって感情移入しろと?

おまけに、まだまだ続く安い恋愛。「幸せになってみようかな」っておい!てめーら葬式の後だろ!

と、言う所で映画は終わる。

あのぉ・・・クロは何をしたのですか?

学校に住み着いて皆に愛されていました。はい。それで?

恐らく、見終わって思ったのだが、この映画が本来やるべきなのはクロと言う視点(もしくは、クロと宿直のおっさん)を通して、様々な高校生達のそれぞれの切ない懐かしい青春を群像劇スタイルで捉えるべきなのでは?そういう描き方をするから、安っぽい恋愛でも許されるのではないのか?中盤の区切り、「10年後」と言う省略。この間のドラマが一番肝心ではないかと思う。

この映画で描かれたのは木村の結婚秘話と、クロの愛らしい顔。それだけ。これは「青春をともに過ごした犬の話」でも「職員会議に出席した犬」の話でもない。三流恋愛ドラマ。

点数はクロを演じた犬と、宿直のおっさんがクロの亡骸に話しかけていた時の台詞に与える。

俺はクロの事を何一つ知らないのだが、クロを通して獣医になった人、クロを通して立ち直れた人、そう言う人が沢山居ると思う。勿論、クロのお陰で結婚した人ももしかしたら居るかもしれない。

だけど、これだけは忘れてはいけない。一緒に居た人の数だけ思い出がある。高校の三年間と言う途方も無く長く、そして思い返せば短かった青春を共に過ごした仲間がクロなのだ。

この中でクロのお陰で・・・と言う人間はあまりにも少なすぎる。木村の視点から描かれた為に10年と言う空白ができてしまったせいだ。

やるなら同窓会等や、10回忌とかでの回想シーンから物語をスタートさせればよかったのだ。

(評価:★2)

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