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[コメント] 青春群像(1953/伊)

馬鹿
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原題がのらくら、その通りの映画としか言い様がないみたい.私に言わせれば、出てくる者たち皆馬鹿、フェリーニ流に馬鹿を描くとこうなると言うべきか. 結論を先に書けば、その中で唯一人、自身の人生に悩み抜いたモラルドは、馬鹿な仲間のなかにいてはいけないと悟って、一人旅立つ事にする.この映画、ただそれだけの映画だと想う.

言葉を一つ、映画の中から拾い出してみましょう.モラルドが夜道を徘徊しているとき出会った駅員の少年に「満足しているか」、と聞くのですが. 満足を辞書で引くと、望みが満たされて不平のないこと.出てくる者達、皆、望みが満たされることのない者達ばかり、というより、満たされることのない望みばかりを追いかけている、こう言わなければならないのでは.その典型がファウスト、街一番の美女サンドラと結婚しながらも、次から次へと新たな女を追い求めている.いったいどの様な女性が彼の望みを満たすのか、と言わなければなりません.

すべての者達が空虚なものばかり追い求めている.それが青春、と言ってしまえばそれまで、そこから得るものは何も無い、何も無いものを描いた映画ということになります.

妻が乳飲み子を連れて家出するまで、自分にとって何が大切か分からないような人間では、いかんともしがたいと言えます. 車の上から「労働者階級の諸君」と、道路工事の人夫を馬鹿にする.すぐに車が故障して、人夫たちに追い回されるはめに.全員、どうしようもない馬鹿ばかりと、フェリーニは言い放っているのでは.

あえて書き加えれば、アルベルトは姉の不倫の結婚に腹を立てているが、彼の様に他人の恋愛で悩んでも何も得るものはない.それに対して、モラルドは自身の人生に悩んだのは先に書いたとおりであり、青春の空虚な想い、それを満たすには自身の人生に悩む必要がある、こう言って良いのでしょうか.

モラルドの旅立ちは当てのないもの.友人関係、ファウストと結婚した妹の人生、あるいは家族とか、そうした他人に惑わされることなく、自分自身を見つけるために、唯一人旅立ったのですね.

それからもう一つ.フェリーニは二十歳代前半を、第二次世界大戦のさなかに過ごしています.この映画をフェリーニの自伝的作品というのは、完全に間違いであると思います.

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ギスジ[*] 若尾好き[*] CGETz[*] アルシュ[*]

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