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[コメント] 女ともだち(1955/伊)

恋愛と仕事
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







恋愛と仕事、あるいは結婚と仕事の絡みを描いた作品、一言で言えばこれでよいでしょう. 結論を先にまとめれば、洋服店のクレリア、画家のネネ、と、それ以外の女達の対比は、仕事を持つ女と仕事を持たない女の対比であり、仕事を持たない女は早い話、全員馬鹿と言ってよく、男、男に明け暮れているだけなのですね.そして更に、クレリアとネネの対比は、ネネはニューヨークへは行かず、夫と一緒に居ることを選んだ、つまりは恋愛を選び、クレリアは仕事を選んでローマへ、ということになるのだけど.

仕事を持つ女性という点がこの映画のポイント.男性の場合の仕事と恋愛では、仕事は家族を養うため、ということになってしまって、恋愛との絡みが浮かんでこない. 仕事と恋愛の絡み、仕事と恋愛は同じものなのだけど.だから、どちらを選ぶかは人それぞれであり、この映画の場合、仕事を選んだクレリアが正、ネネが悪と受け取れなくもないけれど、私はこの点は追求せず、ネネもクレリアもどちらも正しいと、しておきましょう.

仕事と恋愛、どちらも同じと書いたけれど、この映画で描かれた点をまとめておきましょう. お店の工事がはかどっていない、設計者の男は不誠実.けれども助手のカルロは誠実に仕事を進めて、だからクレリアとカルロは好きになったと言ってよい.仕事に対する誠実も、恋愛に対する誠実も同じもの. もう一点あげれば生きがい.クレリアがロゼッタに仕事を勧めたのは、恋愛以外の生きがいを持つことを勧めたと言ってよい.そして、ロレンツォとネネの画家夫婦、妻の個展は成功し夫は失敗だった.夫は妻の成功をひがみ、同時に画家としての自身を失ってしまった.恋愛に対する生きがいも仕事に対する生きがいも、同じものなのです.

ロゼッタとロレンツォの恋愛にも触れておきましょう.ロゼッタのロレンツォへの想いは誠実、と言えそうなのだけど、どうなのでしょうか. 生きがい、夢、希望、この観点からロゼッタの恋愛を観てみましょう.ネネはロゼッタと話し合ったとき、ロレンツォに必要なのは自信を取り戻すことであり、そのためにロゼッタが必要ならば、自分は身を引く、それがロレンツォへの愛だ、と言ったのだけど.(言い方は違うかもしれない.仕事を愛するのも、男女が愛し合うのも同じように大切と言っている)けれども、ロゼッタがロレンツォになんらかの自信を取り戻させること、つまりは夢、希望を与えることができたかといえば、何もできなかったのです.ロゼッタは裕福な家庭に育った空っぽな女、なんの取り柄もない女で、仕事もまともに勤まらない、結果はロレンツォの足を引っ張るだけ、落ち込んだ心を更に落ち込ませることしかできなかったのです.簡単に言い換えれば、相手を理解する心がネネにはあり、ロゼッタには欠けている.それが正しい愛、と言わなければならないのだけど.

結果として、この映画の場合、ネネもクレリアも仕事と結婚は両立しなかった.けれども、私達はちゃんと両立して上手く行っていると言われる方が、当然おみえになるはず. 「働くことが人生の中心で、女であり愛があるのよ.いずれ男の人に出会うわ.お互い無理をせず暮らして行ける人に.私とあなたが結婚したら、どちらかが不幸になるわ」 クレリアのカルロへの言葉なのだけど、両立するかしないかは人それぞれなのですね.

仕事と恋愛、あるいは結婚は、同じ価値を持つ出来事、と、しておきましょうか.

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)G31[*] マグダラの阿闍世王[*]

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