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[コメント] バーバー(2001/米)

エドと観客を分かつモノクロの壁。

温度差の無いモノクロのスクリーンに延々と映し出される「バーバー」の登場人物達は皆、どこか無個性で存在感の無い「幽霊」のようにも見える。

だが、我々はそんなモノクロームの「幽霊達」をその目で追い、ある者は主人公エドに感情移入する。

それは映画としてはごく当たり前のように思えるが、この「バーバー」における「観客と登場人物の構図」は実に個性的である。

エドにとっての「他人」とは彼にとって興味のないモノであり、劇中の彼自身の言葉を借りるならば「幽霊」と形容するのが相応しいようである。しかし考え方によっては我々鑑賞者も「他人」であり、決してその対象外ではないのである。きっと彼の目線から見た我々も又、モノクロームの「幽霊」であるに違いないのだから。

このような観客と映画の登場人物の間のシニカルな関係が全編モノクロの破滅的シナリオとコーエン特有の毒気のある人間観によって巧みに演出されているように思う。

(評価:★5)

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