寄生獣は大変好きな作品だったので、公開前から気になってたんです。それでも原作と映画を比較するのは極力やめて冷静に観るように心がけてたんですがやっぱり無理ですね。漫画の名シーンが映像を通してバンバン蘇ってくるんですよ。シンイチと田宮良子が初めて接触した時の田宮良子のもの凄い形相のシーンや、お母さんが寄生されてシンイチを殺そうとするシーンとか、岩明均の絵がどんどん思い出してくる。映画がダメだった訳では無いと思います。映画での表現が適切だったんで、漫画とシンクロしたんだと思います。それに映画版の染谷将太なんかは現代版のシンイチをうまく演技していたし、ミギーとのカラミも怖くも可笑しかったし「勃起させてみろ」のシーンは声を出して笑っちゃいました。河川敷での寄生獣同士の戦いも大変迫力があったと思います。特に「島田」が校内で生徒を惨殺するシーンなんかは、漫画ではグロ表現が大変強く「映画では再現大丈夫か？」と心配してたんですが、監督の山崎貴は逃げずに校内の惨殺シーンを上手く再現していたと思います。シンイチの彼女が原作より強い女の子になったりして、原作と違うアレンジもあり大変素晴らしいシーンだったと思います。

映画は大変面白かったし、続編がやれば絶対見に行きます。けど不満も色々ありますね。その前にやっぱり比較しちゃうんですけど、漫画が100点なら映画が70点で、漫画が20歳以上対象なら映画は15歳以上かな。漫画にある毒っけが上手く消されてる感じで、特に血が出てくる表現はヌルいなと思いました。なんでしょうね、この映画も血はバンバン出るし、人もいっぱい死ぬし漫画と同じ事してると思うんですが、観ていて全然痛くないんですよ。「あ、やられた。」ぐらいなもんで、良く言うと気軽に観れていいんですが。たとえば瀕死の子犬をシンイチが助けるシーンがあるんですが、子犬の表情が「ヌイグルミ」みたいな顔しているんですよ。僕は「何故リアルに表現しないんだ！」と思ってしまいました。原作でも当然あのシーンはあります。犬の描写も生々しく描いています。僕も学生の頃、犬が車に轢かれているのを見て、心の中では助けたい！とは思いつつも「血が凄い出ているし、多分死んでしまうよ…」と言い訳を作っては行動しなかった僕に問いかけてるような大変好きなシーンなんですが、あんなヌイグルミみたいな犬にそんな感情涌かねーよ！と個人的に思いました。

あとキャスティングですかね。全体的にそんなに不満は無いですが、一人いるんですよ。あまり頑張っている役者さんに言いたくないんですが、深津絵里は正直迫力不足だったなー。う〜ん漫画の田宮良子に完全に負けているよ。深津絵里選ぶならベタな選出ですが中谷美紀だよなぁ。中谷美紀の怪しい美貌は田宮良子にバッチリだと思うんだよね。けど、寄生している役者さんの演技は正直みんなどこか微妙でした。水族館のシーンなんかは寄生されてる役者の演技がおかしくて緊迫感は伝わらなかったな。