コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 鬼(1972/日)

 漆黒の闇の中を行く兄弟。彼らの世界には美しい霞がたっているが、母の世界はそうではない。
にくじゃが

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 息子達には闇を切り裂く武器があった。母親は闇にとけ込むしかなかった。人を食らって生き延びていた母。それを知らない息子達は、当たり前のように鬼を討つ。母親の、寝たきりから、バタバタとのたうち回る鬼への変貌。驚きの表情を浮かべる息子たち。鬼を見つめるやりきれなさ。

“哀しい女は、鬼になる。” 鬼になるものの哀しみ、鬼を討ったものの苦しみ。生き抜くためには鬼になるしかなかったのなら、生きていることは罪になるのか。退治した鬼が母親であったのなら、親殺しの罪を背負っていかねばならないのか。生きていくことは、これほどまでに、苦しみの連続なのか。

 これは表情に制限のある人形アニメーションだからこそ表現できたことだ。人間の俳優に演じさせたら、あまりの饒舌さにこの世界は壊れてしまうだろう。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。