それに較べれば、西田敏行はそろそろ自分の老いを自覚すべきだと痛感させられた（好きなだけに言うのも辛いのだが）。この映画での彼は、枯れた風情が見い出せてそれなりに味はあるものの少々見ていて辛かった。

これから期待を繋ぐべきは死神の森迫だろう。こまっしゃくれた死神は作られた演技の匂いは鼻につくが、立派に輝かしい将来性を感じるものになっている。ただし、彼女のこれから活躍すべき舞台は現代劇であろうことは確かなのだけれど。

浅田次郎は『壬生義士伝』のクサさから避けてきたのだけれど、『椿山課長の七日間』あたりからコメディなら結構自分もノレるかな、と思い始めている。特に本作は、執拗な泣かせ場面がないだけすっきりしていた。落語的なノリが幸いしたのだろう、最後の森迫のセリフに至る直前までは心地よく観たのだが、現代シーンは蛇足だろう。それまでが妻夫木の「死に場所探し」に集約されていただけに、視点が分かれてしまったのが残念である。軽快な米米クラブのナンバーで締めくくったのは正解。死神の視点とはいえ、妻夫木の死を語るのは重みがのしかかる幕引きではあるので…。