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[コメント] ビール・ストリートの恋人たち(2018/米)

奔流の如くこちらに押し寄せる劇半音楽の中央に立ち、正面を射抜くように容赦ない視線を放つアフリカ系米人たちの何と存在感を誇り、なおも貪欲な意志を露わにして見せることだろうか。ここにいるのはファンキーな道化役でも、主人公に助言を与える相談役でもない。製作者サイドが望む紛れもない主役だ。
水那岐

何ともカメラが素晴らしい。残酷な現実も、それに相克せんとするようで立派に共存している、若者たちの恋に揺れ動く初々しく甘酸っぱい表情の楽しさもしっかりと表現される。そして完璧な恋愛ドラマが成立しているということは、すでに東アジアにおいても黒人役者は認知されているということだ。映画のなかで彼らが表わすのは、ハリウッド恋愛譚において幾度となく描写された、白い「当たり前の若者」だ。そしてスパニッシュ系や中国系の俳優たちも、今後その軌跡をなぞってゆくだろう。これを企んだバリー・ジェンキンズとカメラのジェームズ・ラクストンの功績は讃えられるべきだ。もう、すでに静かな革命は進行しつつあり、差別の構造からなる若者たちの悲劇は、我がことであるように全ての異国青年たちに受け入れられてゆくからだ。

(評価:★5)

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