[コメント] アイの歌声を聴かせて(2021/日)
大人を屈折した悪と描き、純粋な子供を希望にみちた存在に描く。それは吉浦監督がずっと描き続けたことであるし、今更糾弾すべきことではない。だがそれに監督のテーマである「人工知能との共存」を加えると話はややこしくなってくる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ヒロインがAIと心を通わせ、それが「たまごっち」めいた簡単な機械の頃から連綿とつながる友情であるというのはなかなか心を揺るがすシチュであり、さすがと思えるのだけれど、そのAIが自己の思考能力をもち、友情のためにほかの機械と連結し、果ては人工衛星にまで思考を連結させるのは正直AIに歩み寄り過ぎだ。シオンを許し、その更なる発展のため開発し続けることを許容してしまうのは、狭いこの映画の舞台(ハイテク企業とそのベッドタウンの高校)だけを思っても危険そうには見える。会長が、イヤミな上層部を一喝してまでヒロインの母を認め、数々のトラブルをすべて無視して研究を続行する。その「子供」度合いに納得がいかない。
やっぱりキャラクターを絞ったことにも原因はあるかもしれない。高校の人物がクローズアップされる5人だけしか見えないのはメリットでありデメリットだ。それぞれの人物はよく見えるが、やはり企業を敵に回すには少なすぎるし、むしろかれらに敵対する人物を会社より高校にまわしたほうが物語は深みを増したのではないか。ここに描かれる高校は何より存在感が薄すぎるのだ。
仲間のキャラは楽しいし、絵も自分の好みの造形であるだけに、納得できる展開でないのはかなり辛い。
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