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[コメント] 最初の晩餐(2019/日)

食べ物と家族の話の組み合わせは、goodな着想だ。ただ、何となくわかりづらいし、すっきりしない。 
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







どこがすっきりしないのか?

それはアキコ(斉藤由貴)の元夫が、自殺したという事だ。あの状況で自殺するものだろうか? 当時、日登志(永瀬正敏)は妻と別居しており、(その後) 離婚したらしい。これは分かる。では元夫は何故離婚しないで自殺したのだろう?

アキコは「彼は答えを出してしまった」と言う。答えとは何だ? 自分が身を引くという事・・以上に自分の存在を抹殺し、アキコへの永遠の愛を証明してみせた?、という事だろうか。 この時点でアキコはもう家を出ており、嫌がらせな行動にしか見えない。 こういう男がいないとは言えないが、どうもすっきりしない。

ただ物語の展開上、次のことは考え得る。逆に考えるのだ。 ‘葬式’でシュン(窪塚洋介)が帰って来る → その為にはシュンは以前に家を出ていなければいけない → その為には家を出る相当の理由が必要になる。 その理由が、‘自殺しその後植物人間になっていた実父が5年を経て死んだ’という事ではないのか。

シュンの心の中で、過去に対する1つの区切りがついたのだ。歳を考えてみても、シュンが実父と別れたのが中学生、その後5年経っているから、家を出たのは18〜20歳。独り立ち出来る歳だ。こう考えると、実に分かり易く、すっきりする。

まとめると、作者は葬式にシュンを登場させ、‘最初の晩餐’にする為に、無理をしてでも実父を自殺させる必要があったのだ。

もう1つ引っ掛かったのは、アキコが言う、「だけどね・・・(日登志)と離れることだけは考えられなかった」「私、後悔してないの」。これは相当極端なセリフだ。子供の美也子(戸田恵梨香)に「恥ずかしくないの、子供の前で。そんなあんたに家族の事って言われたくないわ」とケチョンケチョンに言われるが、これもここで無理を承知で言わせないと、次の主人公麟太郎(染谷将太)の次のセリフに続かなかったからだ。そのセリフこそ、 ‘家族って何?’という映画のテーマなのだ。

もっともこのテーマは難しく、映画中でもホントにその答えは出ない。

答えは出ないが、作者が用意した2つのとても良いシーンが有る。美也子と夫、と主人公と恋人のシーンだ。

この2つのシーンを観た時、中味は同じだが、昔聞いた言葉を思い出した。それは「家庭は、守ろう(作ろう)と思わなければ、壊れて行く(作れない)ものだ」。そこには意志が必要という事だ。

ラストも良かった(‘頬をペチーン’と‘おはぎ’を指すが、この2シーンが一番良かった)が、無理した所が引っ掛かった。次回作はすっきりとまとめて欲しい。3.8点。

(評価:★3)

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