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[コメント] 八日目(1996/仏=ベルギー)

「聖なる愚者」
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







欧米には「聖なる愚者」という考え方があるそうだ。詳しくは知らないが、「本当に知恵のある者になるために愚かな者になるべし」との聖書の教えを基にしているものらしい。「聖なる愚者」は我々の前に突如現れる。我々は「聖なる愚者」の汚れのない言動を見聞きし交流することで、普段当たり前だと思っていた我々の世界に潜む矛盾や罪悪に気付かされる。この「聖なる愚者」をモチーフにしてる映画はけっこう多い。ぱっと思いつくだけでも『レインマン』、『フォレスト・ガンプ』、『スリング・ブレイド』、(未見だけど)『アイ・アム・サム』など。

「聖なる愚者」たるジョルジュ(パスカル・デュケンヌ)に触れることで、家族を崩壊させ人生に躓いていたアリー(ダニエル・オートゥイユ)は再生する。そして、映画を鑑賞している僕自身も「聖なる愚者」のお陰で、自分の中にまだまだ整理できていない領域がたくさんあることを考えさせられた。

例えば、ジョルジュが靴屋で暴れ店に迷惑をかけるシーン、追い越したトラックを挑発しておきながら、ボコられるアリーを見殺しにするシーン、観ててとても不快だった。映画の中のアリーも迷惑被って相当ムカッ腹たってたはず。だけど、彼はその怒りをストレートにジョルジュにぶつけない。もし健常者が同じことをしたとしたら…。アリーには「知的障害者だから仕方が無い」という心情が働いていたに違いない。そのような”情け”をかけることは差別ではないのか?健常者と全く同一の扱いをすることが正しいことなのか?僕の中には全く答えが用意できておらず、戸惑いを感じるのみだった。

そんな居心地の悪さを感じるシーンがたくさんあった。今の段階では自分の未熟さを知るばかり。今後何年か経ってから再見し、その時にはもっとこの映画を直視できるように、成長していきたい。そう思った。

花火のシーンは美しかった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ざいあす[*] ジャイアント白田[*]

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