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[コメント] 波止場(1954/米)

船と堤防の遠景。このエスタブリッシング・ショットはいい。ビルの屋上と鳩小屋、後景に港が見える公園や空き地の風景に人物が小さくとらえられるショットなんかには、ネオレアリズモのような突き放した感覚があり、画面に名作然とした風情を与えている。
ゑぎ

 しかし、人物へ寄ったショット含めて、良い画面は、ほゞボリス・カウフマンの功績のように感じられるし、やっぱり、俳優へのディレクションとカッティングは、今見るとクサ過ぎると私には思える。こゝでのカッティングと云う言葉にはプロットの取捨選択や構成も含まれる。

 例えば、中盤以降、本来、神父のカール・マルデンマーロン・ブランド、あるいは、ブランドと一緒にいるという意味で、エヴァ・マリー・セイントなんかが襲われるとか、危害を加えられる、といったプロットでスリルを醸成すべきではないかと私は思う。こういった点をイマイチきちんと描かずに、筋違いの人物が殺されたりして、興が覚める。ブランドが、兄のロッド・スタイガーから拳銃を突きつけられるシーン(タクシーの中の場面)もあるが、こゝも、二人の関係性を強調する、ということでは良いシーンかも知れないが、スリルには機能させないのだ。

 そして、終盤のクライマックスと云っていいだろう、ブランドとリー・J・コッブの一対一の対決(殴り合い)からエンディングへいたるシーケンスが、ちょっと我慢できないぐらいクサいと云うか、理屈っぽい演出だと思う。叩きのめしたと思いこんでいるコッブを失望させるために、瀕死のブランドを一人で歩かせるマルデンの造型がカッコ悪すぎるじゃないか(私には、マルデンが一番の悪役にも思えてしまう)。人夫たちが、誰も手をさしのべず見守る中、倉庫の門へ一人歩いて行くブランド。こゝのカット割りもクサ過ぎる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] jollyjoker

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