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[コメント] 私は二歳(1962/日)

医者の浜村純が、百日咳の見本を見せる演技で、山本富士子と息子(太郎)がともに思わず笑ってしまう場面が微笑ましい。
ゑぎ

 映画賞やベストテンのたぐいというのは、本当にあてにならない、なんて今さら云っても仕方がないが、本作を四半世紀以上前に見た際にも、大した映画だと思えなかったのに、さらに今回再見してみようと考えたのは、やはり、キネ旬ベストワン作品、ということがあったからだと思う。結果、かつてと同様、大した映画だとは思えませんでした。でも、市川作品としては、題材からの要請からか、いつもの嫌らしさが希薄な、それなりに楽しめる出来だとは思いました。これが、ベストテンの10位ぐらいだったら、まあ納得できるのだが、やはり、大勢の投票で決まるシステムだと、これを面白いと思わせる、時代の空気みたいなものが反映してしまうのでしょうね。

 私が感じた特記すべきことをあげておきます。まず主役の二人、船越英二の軽薄な感じは、いつものお得意のキャラだが、安定した面白さだ。山本富士子は、やっぱり着物姿の方がいいと思った。云っちゃ悪いが頭が大きく見える。演出だと、部屋の中の太郎(赤ちゃん)のアップで望遠レンズを使って撮っているカットがいくつかあって、これは悪くない。ただ、屋内でも屋外でもズームは頻出する。

 また、ワンシーンだけの出番だが、山本の義兄(船越の兄)の妻役で渡辺美佐子、山本の実姉の役で京塚昌子が出て来て、いずれも印象深い。特に渡辺は、初めて船越の実家(母親の浦辺粂子の家)が映る場面、瓦屋根の俯瞰カットの次に登場し、山本に手伝ってもらいながら、新生児(第二子)を沐浴させるのだが、ずっと汗だく、というか、もの凄い汗の量なのだ。隣の山本は、うっすらとしか汗をかいていない。こういう極端な人物の対比で、イヤラシさを感じさせる市川演出が、私は嫌いなのだが、本作では、そうでもなく、渡辺の望遠アップと、屋内の二人(渡辺と山本)のロングショットを上手く繋いで良いシーンにしていると思った。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] けにろん[*]

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