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[コメント] ハドソン川の奇跡(2016/米)

携帯電話の映画。携帯電話という道具立ての映画性を再認識させてくれる。タブレット端末の画面の文字ではこうはいかないのだ。いや実は、何度も出てくる、主人公サリーとその妻との携帯電話での会話シーンが最も象徴的ではあると思うのだが、それだけでなく...
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 管制塔との通信、ホテル内の内線電話、コックピット内で聞こえる客室のキャビン・アテンダント達の掛け声、そしてラストのボイスレコーダーなど、空間を超えた肉声(正確には肉声じゃないかも知れませんが)のコミュニケーションを丹念に描いた映画だ。その丹念さが胸を打つ。

 主人公サリー(トム・ハンクス)と妻(ローラ・リニー)との携帯電話での会話シーンで、まず特筆すべきは、事故後(救出後)、妻に最初に電話する場面だろう。こゝは、ハンクスとしては、職務中の感覚のはずで(実際、この後、乗客の安否確認をしきにり気にするのだ)、私はてっきり、会社幹部にでも電話で報告するのかと思った。いやそうではなく、彼はまず、家族のことを思いやる。  次に、ラストの公聴会前のシーンを思い起こしてみよう。レストルームから出てきたトム・ハンクスが妻ローラ・リニーと携帯電話で会話をする。この場面のリニーとの会話に思わず目を潤ませてしまったが、実はこのシーンを見て、本作のラストシーンは、家族との再会、抱擁なんだろうな、と予想を立てた。ま普通ならそうでしょう。それがどうだろう。ラストでも妻子の元へ帰るシーンを出さないのだ。イーストウッドは、あの電話のシーンで、ローラ・リニーの出番としては必要十分だと考えているのである。副機長アーロン・エッカートによる、まあまあのアメリカン・ジョーク(?)で十分だと。

 ただし、これは映画としての魅力か、と云われると、映画とあんまり関係ないところの話ではあると思いますが、本作の本当のラストシーンはサリーの妻のスピーチだ。ローラ・リニーの扱いは、このスピーチを含めた全体構成の中での判断ということでもあるのだろう。そのあたりも含めて、最近のイーストウッド映画らしい。なんだか優等生的過ぎる。誰かのアイデアなんだろうな、と思ってしまう。とは云え、とにかく完成度は高い。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ナム太郎[*]

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