コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 最後の決闘裁判(2021/米)

「藪の中」的な面白さは僅少。第3章を基調に全体を描いて、100分くらいの尺に収めていれば、傑作になったかも知れない。
ゑぎ

 各章の出来事自体の相違点は僅かしか無く、異なるのは、切り取る場面と、個々の回想者の主観的な思い込みの相違と思える。それぞれが思うところの真実の具現化というか。例えば、川を挟んでの合戦シーンで、アダム・ドライヴァーマット・デイモンに命を救われる出来事については、デイモンにとっては重要な記憶だが、ドライヴァーにとっては取るに足りない出来事なのだろう。そういう意味だと、第2章のレイプシーンは、ドライヴァーの主観としてのジョディ・カマーの反応を、もっとはっきりと描くべきだろう。

 もっとも、「藪の中」構成の冗長さを減点したとしても、見応えのある演出が横溢していることも確かだ。つまり、個々のシーンのリドリー・スコットの演出には並々ならぬものがある。合戦シーンは、上に書いたシーンと、あとスコットランド遠征の場面と2回あるが、いずれもコンパクトだが、とても迫力がある。そして、デイモンとドライヴァーの決闘シーンの、死にものぐるいの闘い、その壮絶さは、特筆に値するだろう。これがあるので、本作の満足度は高い。

《一応、以下はネタバレ注意です。もう少し、気になる点を書きます。》

 デイモンの母親、ハリエット・ウォルターが、下女たち全員を連れて家を空けたのは何故だったのだろう。それをドライヴァーは知っていたのだろうか。このあたり、もう少し突っ込んでも良かったか。まあ大したことはないが。

 エンディングについて。デイモンもドライヴァーもいずれも酷い男だが、間違いなくドライヴァーの方が、より卑劣漢として描かれているワケで(ラストのラストまで偽証するのも凄い)、この帰結は仕方ないのかも知れないが、ありきたりにも思う。史実がどうあれ、ドライヴァーが勝利をおさめる展開だったら、映画史に残る作品になっていただろう。カマーの焚刑を見るのは可哀想過ぎて嫌だなぁと思いながら、見てはいましたが。あるいは、彼女の焚刑への恐怖をもっと描いても良かったかと思う。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。