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[コメント] 燃えよ剣(2021/日)

五稜郭の戦い直前の土方が、フランス軍士官ブリュネからのインタビューに答える、その回想形式でプロットが進み、五稜郭の戦いがクライマックス、という構成だ。
ゑぎ

 少々説明ゼリフが鼻につく部分もあるが、有名な(よく知られている)逸話をキビキビ繋ぎ、長尺をダレさせず見せていると思う。鳥羽伏見の戦いも、会津戦争も時間を取らずに、ちょこっとだけ見せる。クライマックスの函館戦争ですら、あっと云う間に終わらせるのは、想像と違っていたが。それでも全体に快調な、面白さが持続した作品だと思う。

 途中、隊士の女(妻)たち、柴咲コウ阿部純子らの井戸端会議的な会話シーン(勿論、文字通りの井戸端ではない。清水寺か?)で状況を説明する部分もあり、不自然なシーンではあるが、私は、こゝも面白い演出だと思った。

 役者では、岡田准一は殺陣もさることながら、序盤の歩き方が良く、温和な沖田総司−山田涼介の優しい口調、一貫した優しさもいい。たゞ、この二人と女性に関する部分は(女性観も含めて)、カッコ良すぎるのではないか、と思った。あとの隊士では、源さん(井上源三郎、享年40歳)が随分とジジイに見えるが、演じている、たかお鷹は、よく目立って儲け役だろう。『地獄の黙示禄』のキルゴア大佐のような、戦場で動じないシーンまである。土方のホトガラのシーンでの幻想カットにも、近藤、沖田と並んで顔を出す。この幻想カットには素直に感動する。あと、常にテンパっている徳川慶喜−山田裕貴の戯画化された描写も面白い。障子の開け閉めの演出は、撮影現場の創意ではないだろうか。

 音楽も良く、「耳に残るは君の歌声」の変奏が何度も(柴咲のシーンなどで)流れて情感を盛り上げる。池田屋事件のシーンは、カルメンのハバネラで、これも、憑かれた男たちによる狂気の所業といった様相を倍加させる効果が出ていると思う。

 尚、全般にカットを割り過ぎていて、せわしない画面だと思った。縦横無尽なカメラワークではあるが、もうちょっと落ち着いたカット繋ぎにすればいいのに、と思い続けながら見た。ちなみに、ズームは、五稜郭戦の最初に、2回ほど、素早いズームがあっただけで、『日本のいちばん長い日』(同じ撮影監督)のような、ハリウッド映画的な使い方でなかったのは、良かった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)disjunctive[*] トシ

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