コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] フレンチ・ディスパッチ(2021/米)

何という情報の質と量。俄かには処理できないが、簡単に云えば、めっちゃ面白くて美しい、という(陳腐な)感想に尽きる。ただし、こゝまで来ると、愛好者をターゲットにし過ぎているのではないか、という思いも起こる。いや愛好者が増えてくれればいいのだが。
ゑぎ

 冒頭の導入パート。銀盆に食べ物、飲み物が載せられ、建物の上階へ運ばれる。もうこの画面を見た瞬間に、タチを想起せずにはいられない。淡い色調。書き割りのような、面的な画面造型。冒頭の建物側面カットが顕著だが、例えば飛行機の断面カットや、人物の正面切り返しの多用もそうだ。だが、シンメトリーな画面構成は思ったよりも多くなく、構図のバリエーションは豊かなのだ。そして、視点移動(パン、ズーム含めて)と、モノクロからカラーへの転換で、瞠目させる。特に、唐突なカラー画面の挿入には衝撃がある。ベニチオ・デル・トロの描いた絵画のカラー化や、シアーシャ・ローナンの目の色を見せるカットなど。

 ほゞ三話のオムニバス。一話目二話目には明確なヒロインがおり、いずれも素晴らしい。すなわち、レア・セドゥリナ・クードリ。重要な情報だと思うので、書いておきますが、二人ともヌードを披露する。映画全体を通じて、セドゥのインパクトは決定的だろう(セドゥの登場はフルヌードです)。しかし、『パピチャ 未来へのランウェイ』のクードリが、国際的な女優になっていく瞬間に立ち会える喜びも大きい。

 三話目には、シアーシャ・ローナンが出ているが、ほんのチョイ役で(上に書いた、ワンカットの見せ場はあるが)、この挿話にはヒロインらしい役割は存在しない。チョイ役ということで云えば、クリストフ・ヴァルツウィレム・デフォーもそうで、なんかあまりに勿体なく感じられて、瑕疵のようにも思えるぐらいだ(本来作品の価値とはあまり関係ないが)。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。