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[コメント] アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版(2021/ルーマニア=チェコ=クロアチア)

まず、がっつりコロナ禍を描いていることに驚いた。皆室内ではマスクをし、マスクがずれると、それを指摘されるという場面が複数回ある。全体の構成は、最初に話の焦点となる流出動画の検閲バージョンが映され、その後、3つのパートで構成される。
ゑぎ

 パート1は、主に歩く主人公の女性を延々と映したシーンが続く。途中、市場や薬局、カフェなんかに寄るが、ほとんどのカットは、舗道を歩く主人公のロングショットだ。また、パンニングで追ったあとのカット尻は、ティルトアップして、看板や建物の上部を映すパターンが多い。こんなのが、40分ぐらい続くのだが、これが面白いのだ。このゆったりとしたリズムは、ラドゥ・ジューデらしさだろう。途中、主人公及び他の登場人物の不寛容がちょいちょい見せられる。例えば、グロッサリーストアのレジ前での客同士のやりとり、横断歩道の歩行者と止まらない自動車とのいさかい。実は、この歩く女性が、冒頭の流出動画の女性と同一人物なのだが、私は、その関係を理解せずに見ていた。

 パート2は、様々な言葉の定義を警句っぽく表現したもの。映像も、微妙に的を射ていたり、外していたり。このパートも興味深いが、ふーん、と思いながら見るしかないものも多い。ちょっと気になったのは、セリフやナレーションもなく、映像の中に文字もないのに、警句っぽい日本語字幕が沢山入っているのは、どういうワケ(システム)だろう。外国版製作時に、入れる字幕の文言が指定されている、ということだろうか。

 パート3は、学校での保護者会。パート1で延々と歩いてた女性(冒頭流出動画の女性)は高校の教師だったと、私はこゝで分かる(にぶい?)。彼女が、保護者たちから、つるし上げられ、また、反駁し合うパートだ。最終的に、辞職に追い込むかどうかの採決をとる。私は、主人公の主張について、ほとんど共感できるものだったが、先生を尊敬するのは生徒の義務、というクダリは首をかしげた。しかし、保護者たちの議論が脱線し過ぎるのはいいのだが、もっとぶっ飛んだ、面白い展開にできたんじゃないか、と思いながら見た。

 この監督の作品で『アーフェリム!』という、ベルリン映画祭(2015年)で銀熊賞(監督賞)をとった映画を見たことがあるのだが、本作とはかなり趣きが異なる、1850年代のルーマニアを舞台にした、ほとんど西部劇のような作品だった。ただし、基調となっているブラックなユーモアは共通しているかもしれない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)プロキオン14[*] ぽんしゅう[*]

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