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[コメント] コヴェナント 約束の救出(2023/英=スペイン=米)

山間の道を空撮真俯瞰の移動撮影。ドローンだろう。灌木や低木の山。アフガニスタン。字幕で状況説明が入る。冒頭は2018年。ジェイク・ギレンホール−キンリーのチームのメンバーを1人1人字幕を出して紹介するのは、フェイントだ。
ゑぎ

 私は、終盤ぐらいまではこのチームで一緒に行動するのかと思い、顔と名前を記憶しようとしたじゃないか。

 序盤からドローンの活用は徹底的で、特に前半は、シーケンス、シーン導入部は、ほとんど、ドローン大俯瞰のエスタブリッシング・ショットを挿入しているし、小隊の動きを見せるのも低い俯瞰のドローン撮影が多用される。これを見ながら、私は、全ショット(それは固定ショットと見紛わせるものも含めて)、ドローンで撮影した映画が、いつか現れるだろうと思ってしまった。

 一方、冒頭近くで、ギレンホールと通訳者アーメッド−ダール・サリムとの出会いの場面のフィクスの切り返しも、目に留まる造型だ。こゝで、アーメッドのショットで、車両内のキンリーの顔がサイドミラーに映る、しかも上下2つの鏡に映るのだ。このようなオーソドックスな演出においても、安定した技量を見せる作品だと思う。

 また、作劇的な面では、タリバンの爆弾工場についての情報を入手する際、男が、お前の家族を皆殺しにするとアーメッドを脅す場面があるが、後半で、キンリーも電話で同じような脅迫めいた科白を吐くシーンがある、という反復なんかもよく考えられていると感じた。あるいは、アーメッドが仲間の裏切りに気づいて車を停める場面で、キンリーの右脚太腿のホルスター越しのショットがあり、おゝ西部劇だ、と思わせたが、その後、「騎兵隊の救援」シチュエーションが何度も繰り返される。それに、森林、崖、渓谷を背景にした場面は西部劇的風景でもあり、極論すれば、タリバンはインディアンだ(いくら殺しても、多くの米英人は胸を痛めないのだろう)。

 そして中盤は、アーメッドが主役になる。いや、本作全体においても、彼が支えている。なぜなら、キンリーの頭の中は、序盤からラストまで、ほゞアーメッドが支配しているからだ。ただし、アーメッドが手押し車を押すようになって、ちょっと大袈裟な演出が目立つのは気になった。あるいは、場面がLAに移ってからのフラッシュバックが長いし、鬱陶しいと思った。先に見せられたのとは違うテイクだったり、異なる視点(天地逆さまのショットなど)を繰り出して飽きさせないようには考えられているが。

 あと、アクションシーンの造型もいいが、上で、キンリーとアーメッドの(出会いの場面の)切り返しについて書いたけれど、他にもこの2人の切り返しと視線・表情の演出は本作の見どころになっている。特に、終盤の、言葉少ない会話場面(自動車を整備しているアーメッドに静かに近づいていくキンリーの場面)と、ヘリの中の二人の無言の切り返しには心震えるものがある。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] jollyjoker[*]

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