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[コメント] 鉄道員(1956/伊)

クリスマスの映画。ある年のクリスマスの夜に始まり、ほゞ翌年のクリスマスの夜までのお話だ(エピローグとしてその後の描写が少しだけあるが)。
ゑぎ

 ピエトロ・ジェルミ演じる主人公の末っ子、サンドロ(サンドリーノ)については、ルックスも声も、歩き方や仕草も含めて、それはそれは可愛らしい。ただ、彼の独白による進行は、大人が考えたスクリプトであることを絶えず意識させられる。優秀な作家の仕事と思いながら、計算高さも同時に感じられて、複雑な心境になる。次第にサンドリーノがともすれば『ブリキの太鼓』のオスカルや白木みのる(古い!)のように見えてくるのだ(云い過ぎ!)。

 画面上の特質として挙げるべきは、縦構図を意識させる画面作りだろう。家屋の廊下を使って手前の部屋から奥の部屋の人物を見せる。酒場でもドアから店の奥まで、戸外では道路での人物の配置。屋内でのさりげないパンフォーカスカットもいくつかある。おそらく即興的演出は殆んどないのでは、と思う。あと、鉄道のシーンが思ったよりも少ない。線路上に突然現れる青年と、その動揺による信号無視、衝突事故未遂の場面以外は印象に残らない。

 サンドリーノの姉ジュリア(シルヴァ・コシナ)にまつわる愁嘆場の演出が鬱陶しい。前半が特にだが、彼女は、鬱陶しい顔ばかりしていたように思い出される(笑顔のカットもあるし、サンドリーノへの優しさも描かれるのだが)。また彼女につきまとう過去の男の存在、彼女との関係は中途半端。そのデンで云うとサンドリーノの兄マルチェロと悪い友人(ヤクザか)との関係についても中途半端にしか描かれない。

 エンディングのクリスマスの夜の締め括りは、ある意味ファンタジックと云っていい程よく出来た、しかし賢明な演出で感心した。確かに名作然としている。多くの映画ファンに愛される理由がよく分かる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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