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[コメント] 下宿人(1926/英)

女性のクローズアップ。効果的な顔アップとディゾルブの多用。中でも特筆すべきは後半の下宿人=アイヴァー・ノヴェロとデイジー=ジューン・トリップによる2階の部屋でのキスシーンだ。強烈なアップ。映画史上でも最強のキスシーン演出ではないか。
ゑぎ

 さて、装置に目をやると、冒頭から輪転機や自動車からのカット、ネオン・サインとファッションモデルの舞台裏といった面白い画が多々あるが、しかし何と云っても、タイトルになっている下宿人の住居(2階の部屋)の異空間としての見せ方がヒッチコックらしいアイデアに溢れている。例えば、まず度肝を抜かれるのが、下宿人が壁に掛けられた絵を裏返しにしてしまうことだ。一瞬にして、尋常じゃない状態(尋常じゃない空間、尋常じゃない精神)を見せ切ってしまう。あるいは、中盤以降、2階への階段が、これでもか、と効果的に使われるが、階段の上下の人物の高低の見せ方や、階下の部屋のシャンデリアが揺れることで、2階を意識させる演出にも唸ってしまう。ガラスで透過する天井の表現も、あっと驚く。

 そしてエンディングも極めてヒッチコックらしい。それは、帰結の選択の逡巡が招いた結果なのかも知れないが、しかし、この帰結だからこそ、前半からの下宿人=アイヴァー・ノヴェロの怖さが増幅すると云えるのだ。

(評価:★4)

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