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[コメント] ノックは無用(1952/米)

マリリン・モンローは同じ売り出し中の時代でも『ナイアガラ』なんかよりはずっと好感が持てる。はかない美しさがある。何といっても視線の虚ろさが良く似合う。という訳で真面目に演技するモンローが本作の一番の見どころなのだが、実はルシアン・バラード撮影の画面も特筆すべき部分がいくつかある。
ゑぎ

 例えば冒頭アン・バンクロフトがバーテンダーとお喋りをしていると思ったら、いきなり「HOW ABOUT YOU」を唄い出し、ホテル専属の歌手だと判らせる繋ぎは実に良く出来ているし、このバーのシーンの照明の処理で暗転(フェード・アウト)かと思うぐらい明度を落とすカットが2箇所あり、心底驚かされた。また、窓を使った空間処理やエレベータの演出も面白い。

 あと、脇役についてももう少し触れておくと、エレベーター係りでモンローの叔父にエリシャ・クック・Jr。これがなかなかいい役だ。バーで写真を撮る女はグロリア・ブロンデルという女優でジョーン・ブロンデルの妹なのだが、私はてっきりジョーン・ブロンデルだと思ったぐらい良く似ている。また、電話交換手役でジェームズ・キャグニーの妹ジーン(ジャンヌと表記されることも多い)が出ている。そしてバーテンダー役は後にジョン・フォードの騎兵隊モノに出演することになるウィリス・ボーシェイ。もう一つ特筆すべきはアン・バンクロフトの扱いで、歌手としても女優としてもきちんと見せ場が用意されている素晴らしく恵まれたデビュー作だ。もっともこの後、映画『奇跡の人』まで10年かかるのだが。

(評価:★3)

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