コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 星になった少年(2005/日)

見え見えのお涙頂戴演出に騙されるものかと穿った観方で鑑賞したが、最後の最後で常盤貴子に泣かされてしまった。後で実話と知って、また涙。哲夢少年の夢が、この映画によって一歩実現に近づいたと思いたい。
Pino☆

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 子供、動物、坂本龍一の音楽、主人公(柳楽優弥)の唐突な死に蒼井優。泣かせるための演出とは言え、ここまで動物や子供を道具に使うのは正直きたないと最初は思った。

 ”泣かせるぞ”と言わんばかりのあざとい演出が素直に感情移入しようという気持ちを阻み続けたが、ラストの常盤貴子の号泣には、自然に涙腺が緩んでしまった。ラストシーンの常盤貴子の涙には、愛息を亡くした悲しみ、母親としての苦悩や葛藤、息子への贖罪と愛情、短過ぎた人生への無念さ、後悔、色んなものが凝縮されていた。このとき初めて、この映画を観て本当に良かったと思った。

 振り返ってみると、坂本龍一の美しく神秘的なテーマ曲も素晴らしかった。ただ、上質な音楽に映像の質感がついてこない所が多かったように思う。幾つかのシーンでは映像が激しくブレていたり、パーン・シーンやズーム・アップ・シーンは全体的にスピードが早過ぎで、見苦しい映像が多かった。TVドラマならこれでも構わないが、劇場映画なら動物1つとっても、もう少し丁寧に撮影すべきだったと思う。

 最後にストーリーについてだが、この話が実話に基づいているということは、ついさっきまで知らなかった(すいません。でも、本編でそんな説明は無かったように思う。見落としたのかも?)。実話だということを知って、この映画への価値観は一気に変わってしまった。今になって、もう少し自然な観方をすれば良かったと後悔している。

 と同時に、哲夢少年の象への思いがどの様なものだったのかについて凄く興味を持っている。彼は絶滅の危機にさらされている地上最大の生き物を一体どの様に観ていたのだろう? 何故あれほどまで象に興味を持ったのだろう? 象との触れ合いの中で、感じたものは一体何だったのか?

 普通の人ができない何倍もの経験をして、普通の人が描けない何倍もの夢を描いて、哲夢少年は短い人生を終えた。夢が叶わずに逝ってしまったのは、さぞかし無念だっと思うが、今やっと、この映画を通して、哲夢少年の夢が現実に近づき始めた気がするのは、私だけだろうか?

***********************************

<追 記>

 親から子へ。そして子から親へ。映画の中で常盤貴子が演じたお母さん、坂本小百合さんは、「年老いた象が安らかに住める場所が作りたい」という哲夢少年の夢に向けて、今まさに第一歩を踏み出そうとしている。

 2005年秋にオープン予定の「勝浦ぞうの楽園」は、日本初の象が静養するための楽園である。動物園の閉園などによって行き場がなくなった象、年老いてリタイアする象、病気やストレスから休養を必要としている象たちが、安心して過ごせる土地を作りたいという坂本小百合さんの長年の構想が実現したものだ。

 「勝浦ぞうの楽園」は、主にLEA※会員に開放され、象に餌をあげたり、象の散歩につきあいながら、継続的に象の暮らしを支えていく。動物が静養するための土地であることから、森林の伐採は最小限に留め、木が倒れたら倒れたところに穴を掘り、象が好きに歩いたところに獣道ができていくという自然に任せた楽園作りを目指す。また、野山が荒れることを防ぐため、原則として一般公開はされない。今後、水浴びを好むゾウのためのお風呂や、訪問者が宿泊できるロッジの建設が計画されている。 ※ LEA:日本のぞうさんを幸せにする会。坂本園長や元上野動物園園長ら11名が集まって発足させ、動物園の象の高齢化対策や繁殖、閉園後のゾウの保護に取り組んでいる。

 以下は、HPにあった坂本小百合園長のコメント。

 「千葉県勝浦市の13ヘクタールの広大な山野。山林の頂上からは鴨川市や勝浦市へと続く太平洋を望む海岸が一望できます。広くて大きくて包み込まれるような山野、タイやインドの故郷を思い出させてくれる生い茂る緑の木々。それは高齢のぞうさんたちに豊かな時間を過ごしてもらうためのあるがままの自然の姿です。ぞうさんは山に多生するススキを自由に食べ、好きな木の枝を折って食べたり、岩に体をこすりつけたり、好きなだけ水浴びをする。訪れた人々はぞうさんの背中に乗り、ゾウ使いをお供に山道を自由に歩いてもらう。ぞうさんが木を倒し、草を食べて作った獣道をぞうさんの背中で辿る。人間もぞうさんも他の動物もみな同じように思い思いの楽しみ方で自然を満喫できる。わたしが思い描くこんな「勝浦ぞうの楽園」はもう少しで産声をあげようとしています。」

◆ 参考リンク ◆

Discovery Channel 坂本小百合園長インタビュー ⇒ http://japan.discovery.com/we/we005/index.html

市原ぞうの国 ⇒ http://www.zounokuni.com/ 

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)IN4MATION[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。