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[コメント] 残菊物語(1939/日)

カメラの移動と構図のみで、ここまで心的描写が可能なのです。
TM大好き

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画の見どころは、カメラの移動と構図です。 例えば、映画冒頭、お徳と菊之助が小川沿いを歩くシーンにおいて、8分近くにわたり、クローズアップを介さないロングショットによる横移動の長回しショット。この歌舞伎を意識したカメラワークが、実にまた上手く、この種の芸道モノに適合しています。

また、終盤、東京に戻った菊之助をみなが囲んで宴会をやっているわけですが、菊之助が宴会の席を抜けて、廊下をわたって台所に行き、かつてそこにいたお徳をいまや失った現実と向き合うまでをワンシーンワンカットで撮っているところなどは 、なんとも巧みです。日本家屋の構造的特性を生かし、カメラの移動と構図だけで、菊之助の感情をここまで映画的に表現してしまう。 これこそ、溝口が世界的評価を受け続けている理由ではないでしょうか。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)煽尼采 ゑぎ[*] moot

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