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[コメント] 隠された記憶(2005/仏=オーストリア=独=伊)

「扉」の内/外の劇。個室、エレベーター、トイレ、等々で際限なく繰り広げられる、他者の排除、或いは逆に、一所に他者と閉じ込められることを巡るサスペンス。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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特に顕著なのは、犯人と目されるあの男が唐突に、自らの首を掻き切って自殺するシーン。その時、倒れた彼の身体が扉を塞いでしまい、主人公は、まさに逃れ難い状況に突如として放り込まれる。

監視カメラの視線は、内/外の劇の舞台となる家屋そのものを、距離を置いて見つめ続ける。そのロングショットは、最後に風邪で一人眠りに就く主人公が夢に見たと思しき、少年期の記憶、一連の事件の犯人と思しき男が家から追い出される回想シーンでも反復される。抵抗し逃げ出そうとする少年を大人たちが連れ去る光景を、ただ冷徹に観察する視線。

ラストカット(兼エンドロール)は、主人公の息子の学校の前だろうか、やはりロングでの、無感動な観察の視線。犯人の息子は、主人公に対し、父は貴方のせいで教育の機会を奪われたと主張していたが、そうした境遇との「距離」を痛感させるカットだ。ところでその主人公の息子はといえば、母の不倫を疑い、つまりは家庭という「内/外」の枠が崩壊することへの嫌悪を露わにしていた。

(評価:★3)

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