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[コメント] ユメ十夜(2006/日)

感心したのは六夜と八夜のみ。大勢が寄って集って作った映像より、漱石が独りただペン先から滴らせた文字の方が幾百倍も詩興に富んでいるのを思い知り、言語芸術万歳を心中叫ばずにいられない。シネスケでそんな事を言わざるを得ないのが哀しい。
煽尼采

第一夜 監督;実相寺昭雄

 手堅いのでも、地味だが滋味ありというのでもなく、普通。1点。

第二夜 監督:市川崑

 この監督が巨匠と呼ばれているのが全く理解できないんですが、まだ観るべき作品を観ていないんでしょうね、きっと。1点。

第三夜 監督:清水崇

 この人の映像を観て恐いと感じた事が無いし、何だか却って笑ってしまう。1点。

第四夜 監督:清水厚

 脚色によって理に落ちた観。1点。

第五夜 監督:豊島圭介

 原作を知ると、男女の視点の反転等、脚色の面白さが味わえるが、その、原作を補助線にすると見えてくる構造が無ければ、ベタなオチに収束する平板な作品に思えてしまう。3点。

第六夜 監督:松尾スズキ

 非常に原作に忠実であるが故に、その語り口の可笑しさが際立っているし、あの「用語」の使用がまた、無責任に勝手な事を言い立てる有象無象の率直な感想、という雰囲気を巧く醸し出している。4点。

第七夜 監督:天野喜孝、河原真明

 綺麗なだけ、と言いたい所だが、充分に美しくもなく、天野喜孝の原画を活かしたアニメとしては、教育テレビの子供向けアニメ“やさいのようせい”の方が遥かに上。2点。

第八夜 監督:山下敦弘

 あの原作の映像化がこれだという現実そのものが、不条理な夢のようだが、純粋に映像作品として観れば、すかしっ屁ならぬ、すかしギャグとも言うべきずらし方がシュールで素敵。4点。

第九夜 監督:西川美和

 緒川たまきの愛らしさと、着物の下から覗くふくらはぎに免じて一点オマケするけれど、それ以外に見所無し。2点。

第十夜 監督:山口雄大

 五夜に似て、原作を裏側から覗いたような脚色だが、結果的には漱石というより漫☆画太郎の映像化。3点。

プロローグ・エピローグ 監督:清水厚

 何の工夫も無く、テレビドラマの一場面みたい。0点。

 因みに原作は、青空文庫でさらさらっと読めるのです。原作を知っているか知らないかで、映画の感想もかなり違ってくるんですが、果たしてそれが良い事なのか。原作をどう料理したか、を知らずとも愉しめるのは六夜と八夜、五夜と十夜も、まあまあか。原作を知っていると却って評価が余計下がってしまうのが、一、ニ、三夜。八夜も実は、原作を知ると、微妙。一夜は、脚色は悪くないかも知れず、映像がまるで詩的でないのが残念。

(評価:★2)

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