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[コメント] J・エドガー(2011/米)

老けメイクを晒すディカプリオの声の若々しさが茶番感を煽る。あの甲高い声がエドガーの人物像とマッチしていると言えば言えるが。科学捜査のディテールがおざなりなせいで、エドガーのモノマニア的性格の描写も弱い。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







女性を誘ってのデートに図書館へ連れて行き、自ら考案した図書分類法を自慢するという仕事人間&オタク人間ぶりの発揮。これで国民をも分類整理すればたちどころに犯罪者を逮捕できるという発想は、『チェンジリング』のジョリーさんが勤めていた電話交換局を想起させる。膨大な数の人々を繋ぐシステム。

エドガーは、FBIのイメージ向上の為、或いは自己顕示欲も相俟ってか、嘘をついてまで、映画スターのように振る舞う。「映画スター」として米国を担うこと。そこにイーストウッドとの接点を見出すことも可能ではある。カメラマンたちの前でシャーリー・テンプルにキスを求め、「奥さんに叱られるわ」と言われると、エドガーは「私はまだ母と暮らしています」と答えてキスを得る。映画スターであること、仕事に徹すること、ゲイであること、母に依存し、一心同体であること。これらは全て一体なのだ。かつてエドガーに求婚されたミス・ギャンディが、「仕事にしか興味がない」とか何とか言って断ったのと似ている。

そして、他ならぬ母に「女々しい息子など、死んだ方がマシ」とまで言われたエドガーは、その言に従うと同時に、長官としての体面を保つためか、映画女優に求婚しようと考えている、とトルソンに告白する。そこからの大喧嘩と、トルソンからの突然のキス。激しい息遣いで取っ組み合うシーンで既に、何やら生々しい濡れ場のような様相さえ呈して見える。

吃りを矯正されてきたらしいエドガー(中年期辺りで、母に鏡の前に立たされ、「先生に言われた通りに発音しなさい」と諭されるシーンがある)が、晩年になって、老いが進むトルソンの言語不明瞭を叱責するシーンは、母の抑圧からの避難先として彼の存在があったのだと実感させる。エージェント・スミス(どっかで聞いた名前ですなー)に自叙伝を語るエドガーは、色々と自分に都合よく話をでっち上げていたようだが、そんな彼が、トルソンに対し、「君と面接した時、汗をかいていたのは、運動していたからじゃない。初めて、誰かを必要としていることを実感したからだ」と告白する台詞は、男としての体面を保つという意味ではスミスへの嘘と通じるが、その意味するところは対照的だ。

(評価:★3)

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