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[コメント] ダイヤルMを廻せ!(1954/米)

この、数学的なまでの完成度は、激しい場面にすら静的な印象を植えつけるので、緊張感に欠けた俳優の顔の退屈さに災いされて睡魔に誘われる。それはともかく、この作品は、脚本が鍵→
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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劇中で決定的な役割を担う小道具である、鍵。鍵が役立つには、鍵穴に指した時に完全に噛み合う必要がある。噛み合う鍵でさえあれば、それを手にしているのが誰であろうと機能する。

劇中で犯人は、言葉巧みに複数の状況を噛み合わせることで完全犯罪を実現しようとする。彼は、言葉と状況が噛み合って見えさえすれば、たとえ嘘であろうとその言葉は公的に機能する、ということを利用するのだ。そして、鍵を交換するように、殺人者としての役割をも、暗殺者、次いで妻へと手渡していく。

ダイヤルMは「Murder」のM。電話=声・言葉が鍵として機能する。

知的に構成された脚本に、的確なショットを噛み合わせた演出。だけど僕にはレイ・ミランドグレース・ケリーロバート・カミングスも、そのあまりに古典的な美しさに整った顔が、退屈に思えて仕方がない。第一、この三人の顔は緊張感が薄すぎる。妻役をナタリー・ポートマンにでもして、ショット、カット割りはこのままでリメイクしてくれたら4点にしても良いかもしれないが。

個々のショットでハッとさせられた個所は幾つもあった筈なのだが(特に照明)、僕にとっては魅力に乏しい顔をした三人の役者たちが、精密に計算された脚本をなぞっている、という印象が先立つせいで、美的評価を云々する気力も失せてしまう。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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