ワイルダーの演出力に息を呑むばかりであった。一つ間違えればとっても下品で嫌らしい話になりかねないところをシャーリー・マクレーンの愛らしさとジャック・レモンの苦悩の中に垣間見せる純真な恋心とで、見事な人間ドラマへと仕上げている。当時、60歳近かったドイツ出身のおじいちゃんが、本作のように都会センス溢れる素晴らしいドラマを撮り上げたことに敬服した。

私はレモン演じるお調子者の社員バクスターにいつの間にか自らの感情を全力投入し、バクスターが苦悩する時は気分が落ち込み、シャーリー・マクレーン演じるフランとの恋の成就のために、自らも躍起となっていた。こんなにハッピー・エンドを願った作品は初めてである。

ワイルダーの中で最高傑作とは思っていないが、最高に大好きな1作である。