鑑賞直後の感想としては、何かしっくり来ないなぁというものだった。

簡単に言えば、都合が良すぎるという一点に尽きる。ことごとく協力者が現れるというようなストーリーの展開上しょうがないものから警察側が相当の情報統制を敷いているにも関わらず、一定時間青柳(堺雅人)が直接視聴者に語りかける生中継を実施させてしまうなど、映画で示される前提から考えて不自然なものまで、全てひっくるめて全体的に話が上手くまわりすぎ。

ラストは、まあそうするしかないかという所である。個人的には別の小説でほぼ同様の「処理」を見たことがあったのでさほど違和感はなかったが、この一部をファーストシーンに入れていたのは意図を測りかねる。ただただ混乱させるだけではないかと思う。それは少し残念に感じた。

キャストに関しては、メインキャストの４人はもちろんだが、冒頭の２人が出色。

キルオは浮かれた不気味さがとても良い。原作で伊坂幸太郎が濱田に当て書きしている(※)事もあってか、浮かれてはいるが浮ついている事はなく、良かったと思う。また、伊東四朗が演じた青柳の父はより素晴らしい。胡散臭い情報を鵜呑みにして高圧的に出てくるマスコミを前に、「ちゃっちゃと逃げろ」と言ってしまう父親は一つ間違えば単にヒステリックな印象を持ちかねないが、明確に会見の主導権を握り、愛情に裏打ちされた信頼を表明することでその懸念を一掃した。面と向かって「お前ら、あいつの何を知ってるんだ？」と言い放ったシーンは一種の爽快感も感じたほどである。本作の中では最も素晴らしかったといって差し支えないであろう。

全体的にそつがないが、それどまりと言う印象を残す作品であった。

※http://cinemacafe.net/news/cgi/interview/2010/01/7526/index.html

(2010.02.20 109シネマズＭＭ横浜)