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[コメント] カサブランカ(1942/米)

結局はダメ男とダメ女の恋愛なんだけど、二人の歯車がパリとカサブランカでぴたっと噛み合ったところがいい。気障なセリフも「変にかっこつけんなよ。不器用だなぁ」という感じたし。
agulii

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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製作者の意図はどうか知らないけど、ダメ男とダメ女の恋愛としてみたら面白かった。

揺れ動く女心って言葉であらわすとロマンチックなものに思えるけど、裏を返せばただの優柔不断。実際、ヒロインは最後も自分の意思というより状況に流されて相手を選んだし、なんだかんだいって両方の男を傷つけている。夫と離れてさびしかったから、とうのも陳腐だ。陳腐なシチュエーションだからこそ、どっちかを選べといわれても難しいんだろうな、というのは伝わってくる(演技力も大きいと思う) 男もダンディズムって言葉であらわすとかっこよく思えるけど、普段無口で肝心なときは気障なセリフを吐いてれば、弱いところや人間くさいところを見せずにいられるよね、不器用だなぁ、というだけ。その態度自体、弱さのあらわれだし人間くさいっていう、皮肉になってる。 そんな男女の歯車が一瞬だけぴたっと噛み合ったんだけど、そんな男女がゆえに結局別れることになるっていうの皮肉だ。 ヒロインはどちらの男も愛してはいたと思うし、ラズロに関しては尊敬と愛を混同してるかも? というセリフがあらわすように、もしかしたら主人公のことを本当に愛していたのかもしれない。でも、優柔不断故に別れることになる。 主人公も人妻を手に入れるためには、夫の人生を台無しにしたり、醜い人間くささをさらけ出す覚悟がなきゃいけないけど、それができなかった。そのことが結果的にラズロを助け、新しい友情も築いた。

署長の造詣も見事だと思う。主人公を信用したいけど、信用していいかわからず微妙な距離をとっているとわかるやりとりとか、保身のためにフランス国民でありながらドイツに媚びるところ。媚びながらも完全に割り切れているわけじゃない、でも実際甘い汁は吸ってる、ってる中途半端なところにいるという描写。そういう潔癖でもなんでもない男の心が最後に動くっていうのも面白い。

いやまぁ、「結局は陳腐なプロットじゃん。お前の深読みしすぎじゃない?」っていわればそのとおりだと思うから、この映画が嫌いって人がいっぱいいるのはわかりますけど。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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