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[コメント] マルタのやさしい刺繍(2006/スイス)

もちろんよいシーンも少なからずある。しかしどうにも腑に落ちない。そもそもこの物語の容量からするとこの「悪役」の造型の匙加減は適当でないという点はとりあえず措くとしても、それは保守的な考えに凝り固まった悪役をギャフンと云わせる仕方が作劇の寸法に合っていないからだ。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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主人公たちと悪役らの対立は「いやらしいものか、美しいものか」というランジェリーに対する見方の違いに集約されるように劇は仕組まれていたはずなのだから、ランジェリーそのものの有無を云わせぬ美しさによってギャフンとさせなければならない(そうでなければ物語は「着地」しない)はずなのだが、そのように撮られ/語られてはいない。アメリカかぶれの女性の退場の仕方もよろしくない。なぜ彼女を退場させなければならなかったのか。そこには「作者がもくろむ結末を導くにあたって、彼女が健在でいつづけるのは都合がよくない」という消極的な理由以上のものは見い出しがたい。この映画で最も魅力的な人物であった彼女をこのように作劇の奴隷として扱ってしまう態度を誠実と呼ぶことはできない(既に述べたように、その作劇にしても決して上出来のものではないのですから、なおさら)。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)あちこ[*] 直人

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