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[コメント] スペル(2009/米)

サム・ライミの名人芸を大いに堪能する。大胆にして精緻な演出、テキトーのようで確実な筋運び、異端でありながら王道の娯楽映画。集大成的恐怖演出のいちいちもさることながら、観客の快感のツボの所在を知りつくした手つきが間然するところのないホラー・コメディを築き上げている。
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ビッグ・フィッシュ』で(こちらが勝手に)その後を思い描いたほどの正統派の美人女優には育たなかったアリソン・ローマンがとてもよい。男の庇護欲を掻き立てるか弱き乙女でありながら(掌をパーにして驚くところが可愛い)、文字通りに「戦う」強いヒロインでもある。ことさら現代的と云うほどではないにしても、キャリアを求めるワーキングガールとしての彼女のドラマの確実さが、この直球映画が二〇〇九年に成立することを支持している面は小さくない。農家の娘であるとか元ポーククイーンであるとか、あるいは自棄になってのアイスクリームのバカ食いであるとか、キャラクタとドラマを一体的/連動的に語るライミの仕事は実に如才ない。

また、出演者はおしなべて「顔面」の選択において完璧だと感じる。ステレオタイプな顔面選択でありながらそのど真ん中は微妙に外してあるので、はじめは「この顔でよいのかしら」と思わせるが、劇が進むにつれて次第に「この顔以外にはありえない」と考えを改めさせられる。殊に男性陣においてそうだ。「理想的な恋人」のジャスティン・ロング、「鼻持ちならない同僚」のレジー・リー、「いかにもインチキくさいが真正の霊能者」のディリープ・ラオ。とりわけラストカットの絶望と恐怖に満ちたロングの間抜け面! この顔を得るための逆算的なキャスティングではないかとの穿った見方も許されるだろうというものだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)サイモン64[*] shiono[*]

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