[コメント] プレシャス(2009/米)
照明の不味さが目につくが、自宅シーンでのガボレイ・シディベがことごとくちゃんと撮れていないなんていうのは敢えてかもしれない。会話中の顔にぐいとカメラを寄せるなど演出家の小細工がうるさいものの、役者の充実は疑えない。主演級はむろんのこと、代替学校のやかましくも憎めない面々がよい。
まずはキャスティング・チームの功績を讃えたくなるのが人情というものだろう。シディベ、モニーク、ポーラ・パットンは盤石の配役だ。モニークについて云えば、以前から彼女を知っている観客には意外な役どころのようだが、不安定なところはまるで見受けられない。マライア・キャリーとレニー・クラヴィッツという飛び道具かしらと邪推を誘う起用にしても見事かつ真摯に機能している。
ところで、悲惨なことや不幸なことが起こればその映画が現実に近いのかというと、当然ながらそうではないのだと改めて思う。『プレシャス』は創作であり、『しあわせの隠れ場所』は事実に基づいた物語だという。ただし、これは『プレシャス』への批判ではない。「映画」が現実に似ていなければならない法など微塵もありはしないが、シディベに対して振るわれるモニークの暴力がもっぱら「物を投げる」ことであるというのは、あの体型を考えればいかにも「現実的」であり、かつ「映画的に」面白い。
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