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[コメント] カラフル(2010/日)

〈誰だって俺だって生きていくのぶきっちょだからな〉と歌ったのは早川義夫だが、生きることのぶきっちょぶりに関して小林真は多くの観客の(少なくとも私の)鏡像たるだろう。そして、笑顔を交わす、肉まんを分けあう、自転車で並走する、その程度の幸せがあれば誰だって俺だって生きていけるということ。
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見終えてから向こう数日間はふざける気も起きなくなるほどのよい映画で思わずのけぞったのだけれども、とりわけ小林真の感情の推移にまつわる演出はほとんど神業ではないかしら。批判を集めるかもしれないところのモノローグが多用された台詞も、表情も、所作も、十全にはその推移ぶりを「説明」していない。にもかかわらず、それはどうしようもなく胸に迫ってくる。「分からないから(あるいは、分からなさが)感動的だ」というのとも違う。奇跡とか魔法としか云いようがないものではなく、おそらく原恵一は自覚的に再現可能な「技術」としてそれをやってのけている。アニメーションに明るくない私は、『カラフル』において原は既存の映画文法・アニメーション文法とは異なる地平に立ちながら独自の確固たる文法を築きつつあるのではないか、とまで思って、のけぞった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] tkcrows[*]

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