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[コメント] スプリング・フィーバー(2009/中国=仏)

ずっぷりと映画へ没入する一方で、その「夜」の蠢きは私の脳内サウンドトラックにJAGATARA「都市生活者の夜」を再生させていた。性的嗜好や時代・地域の特殊性を越え、映画は普遍的な都市生活者の心象風景を描き出している。同じように月夜の下で、同じように足をならし……今は午前四時少し前。
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ワンシーンを一台のカメラで追い続けるようでありながら、ひとつのテイク内を適宜つまんで時空間の連続を寸断したり、唐突に場を第三者的に外から眺めるようなカットを挿入したり、勢いだけで作られたように見えてかなり手の込んだ撮影・編集が行われている。とりわけ見目麗しいわけでもないはずの男たちの肌が不意に艶かしく輝くなど、ハッとする瞬間が多くある。果たしてどこまで計算の上で撮られていたのか。制作の経緯から云ってもおそらくロウ・イエは「(映画的)偶然」が入り込むことを歓迎してはいたかもしれないが、それなしでは映画が成立しないほどの期待はしていなかっただろう。エンディング・クレジットに記載されたスタッフの人数を数えるまでもなく、これより貧しい環境で撮られただろう日本の商業映画はいくらでも挙げることができる。『スプリング・フィーバー』はすばらしくプロフェッショナルな映画だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)カプリコーン セント[*]

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