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[コメント] ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years(2016/英)

彼らの録音物の中でも、マッカートニーの“I Saw Her Standing There”に始まってレノンの“Twist and Shout”で幕を下ろす猛々しいロックンロール・アルバムとしての第一LPを殊に偏愛する身として、この期に及んでのビートルズ映画がバンドのライヴ活動期を特集したことには我が意を得たりの感を催す。
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おそらくはステージ設備の時代的技術的制約のためなのだろうけれど、ジョージ・ハリスンに宛てがわれてしかるべき三本目のヴォーカル(コーラス)用マイクロフォンが存在しない。それゆえポール・マッカートニージョン・レノン、ジョージ・ハリスン三者のうち二者が一本のマイクロフォンにかぶりついて歌う図が頻出することになるのだが、ブライアン・エプスタインが仕掛けた衣裳と髪型の洗練・統一もさることながら、これがビートルズのステージングにおける視覚上の大きな魅力となっていることを再認識する(音楽の方面からは、プリミティヴなロックンロールの奏楽に対して入念に重ねられた快適なるコーラスが今なお清新で常緑的な生命感を音響にもたらしている、と云ってみることもできるでしょう)。また、マッカートニーの左構えのベースギターによってアクセントが施されるところの、ステージ前面に並んだギター類三本のネックの向きにおける左右バランスも、ビートルズが数多の同編成バンドに対して誇る視覚的アドヴァンティッジのひとつだろう(シモテのマッカートニーとカミテのハリスンがコーラスを歌うために一本のマイクロフォンを挟んで向かい合うと、両者のギターヘッドはともに客席方向に突き出される具合となり、これが実に格好よい)。

演奏シーンを除いて最も印象深いのは、バンドに対するインタヴューが行われている最中に、ハリスンがニヤニヤほくそ笑みながらレノンの頭頂部に煙草の灰を落とす件だ。このドタバタ漫画の一齣のような悪ふざけのユーモアにはほとんど唖然とするほかないが、その笑いの感覚には我らがザ・フーにも一脈相通ずるものがあると思える。

ところで煙草で思い出したけれども、映画の中で幾度か、喫煙中の面々を撮影した写真が挿入されている。そのスチルにおいて「煙草の煙だけが動く」ように画像処理(動画化)されているのには、くゆる紫煙の映画性について常々広言している私をもってしても「げに頓狂だ」なる所感は斥けられない。

(評価:★3)

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