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[コメント] 乗合馬車(1922/米)

作りはあくまでも小品然としているが、しかしこれは凄い傑作。画面の強度というよりも画面に刻まれた感情の強度に打ちのめされる。私が見た限りではリチャード・バーセルメスはこの映画が最もよい。それはつまりあの神話的な傑作たち―『散り行く花』『東への道』『コンドル』―におけるよりもよい、ということだ。
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下手な有声映画がいかに「映画」からエモーションを奪っているかを告発するところの、最良の無声演技が記録されている。まだあどけなさを多分に残したバーセルメスの顔が怒りや憎しみや哀しみや痛みに歪む、その凄み。満身創痍の体で馬車を駆る真に悲劇的な格好よさ。

銃撃演出も史上最強レヴェルだ。拳銃を構えたバーセルメスと椅子を持った敵を切り返すカッティングの鋭さ。銃口が吹く硝煙のスペクタクル。バーセルメスが放った銃弾と交錯するように飛んでくる椅子の速さ(そしてその椅子は壁に突き刺さる!)。どれもこれもが尋常ではない。恐るべし、ヘンリー・キング

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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