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[コメント] 太陽の帝国(1987/米)

既にヤヌス・カミンスキーを知る立場からすると、これは画面の触感という点で完全に不可だ(アレン・ダヴィオーとのコンビ作は概してそうだが)。音楽も酷い。但し「移動」の演出と大量の人がワンフレームに収まった画面には見応えがある。主人公一家の車が群衆に呑まれるカットは傑作『宇宙戦争』を遥かに予告している。
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と云っても、それは同時にスピルバーグの「罹災」イメージの引き出しが乏しいことを批判する材料にもなるのだけれども。しかしそうしたスピルバーグの手持ちのイメージが私の好みに適っているということは白状してしまわなくてはならない。また、いま仮に「罹災」のイメージと名付けた「集団歩行」のカット等を、スピルバーグの民族的出自と絡めて「難民」「エクソダス」などと呼ぶ人もいるだろう。そのような物云いはあまり私の趣味ではないけれども、いずれにせよ「スピルバーグの暗黒面の露呈」が、広く指摘されている『シンドラーのリスト』以降の作品にとどまらず、既にここにおいてもかなり露骨に顔をのぞかせているということは、遅れてきた観客の特権として恥じらいつつも是非とも云っておきたい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)緑雨[*]

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