映画全編、とてもゆっくりと静かに流れる空気と時間。 観ている私の鼓動も呼吸もゆっくりとしている。 しかし、納棺の儀のシーンを観ていると、胸が苦しくなり、 涙がこみ上げてきた。なぜか自分の家族がなくなった時のことを 一瞬にして思い出してしまう。映画のシーンと同じように。

個人的には銭湯の常連客（笹野高史）が火葬場のシーンで 自分は旅立つ人を送る「門番」なんだという言葉と

主人公（本木雅弘）が自分の父親の遺体の扱いに憤慨したときに言った 妻（広末涼子）の「主人は納棺師なんです」という力強い言葉が印象的だ。

そして、私が最後の旅に出るときにも、きっとお世話になるのだろうと密かに思ってしまう。

しかし、面接に来た本木を社長（山崎努）が履歴書を見ずに、 「採用！」というシーンや旅のお手伝いと書いてある求人に 赤ペンで補足して「旅立ちのお手伝い」と書くシーンなど、 笑いもたくさんあり、重苦しくないのがうまいなあと。

最後に、この映画に描かれる納棺師という仕事。 今まで１度も肉親の葬式では見た事がなかった。 だから、このような仕事があることに実は衝撃をうけたのであります。