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[コメント] エヴァの告白(2013/米)

本作は窓を多く画面に取り入れている。ラストショットは言わずもがな、窓から向かいの建物への声かけ、或いはレナーが部屋に入ってくるのも窓だし、収監された部屋からキリスト教の行列を見るのも窓越しだ。そして何よりあのヒロインの暮らす窓で仕切られた部屋が見事である。
赤い戦車

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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例えばホアキン・フェニックスが"Shame on you!"と毒づく場面では、この仕切られた部屋の構造によって、オフスクリーンの声が止むことが、より効果的になっている。更に言えば、この部屋に面した廊下の向かい側にある扉の存在や懺悔室など、窓の使い方に類似した窃視のショットは本作において多用されている。

それは告解の場面や劇場の舞台袖から表舞台を覗いたり、ドア越しにホアキンとレナーの争いを見たり、地下道でホアキンが殴られる様を隠れて見るコティヤールなど、枚挙に暇がない。他にも会話シーンにおいてよく喋っていない人物のアップやバストショットをカット割に組み込んでいるがこうした窃視のショットの取り入れはジェームズ・グレイの作家性と呼べるもので、「アンダーカヴァー」や「トゥー・ラバーズ」にも存在している。

さて、次にキャラクターを見ていくと、ホアキンやレナーなど主要人物が何者(来歴その他)であるか、という説明はほぼ明示されていない。それは主人公も同じであり、その妹に至ってはさっさと話を進めるためのマクガフィン扱いになっている。また、主人公は劇中何度か眠るのだがそれによって葛藤が生じたり説明が面倒な部分をあっさり飛ばしもしている。親戚の家に辿り着き、眠りに入る直前に挿入される、叔母と叔父が闇に消えていく不吉な仰角ショットが素晴らしい。

また、レナーが初登場するマジックショーの場面も相当に良い。コティヤールがマジックよりも妹に注意が向いていることを視線で示し、その最中に席を離れることでレナーが注目する正当性が生まれる。そして、ここで手渡される白バラは時間経過を表す小道具として効果的に使用されるであろう。

しかしどうにも気に入らない部分もある。冒頭の埠頭での検疫シーンだが、「咳を出すな」などと台詞で説明してるのがまずい。先に言及してきたように、この映画は視線を多く演出しているのだから、この第一シーンでも視線や身体の動き、照明などを使って映像で見せるべきではないか。それにショット自体はかなり弱いと思う。例えば懺悔室の中でのコティヤールのアップは工夫が無いと思うし、どうせならコティヤールが告解を終えて出て行くショットでカメラを引いてホアキンが聞き耳立てていたことを初めて示した方がすっきりするんじゃないか。他にも、ホアキンがコティヤールと初めて会話するあの廊下、あれも個人的には微妙でもうちょっと窓なり開けた場所なり奥行きの出せるところを選んだ方が演出できる余地が増えて面白かったのでは。それともあれか、主人公の進退窮まった状況を表したいからあんな狭い廊下選んだのか。

それと個人的な意見としては、コティヤールと叔母の繋がりがどうにも弱くないか。別に納得したいわけじゃないけど、お金を出してくれる時に驚きもわくわくも何も無かったぞ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)煽尼采

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