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[コメント] WALL・E ウォーリー(2008/米)

愛情を感じさせる“遊び心”に溢れた映画。アトムはピクサーが映画化しろ。
かねぼう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







アメリカ人には“萌え”の感覚が分からないのではないか・・・と、感じることはしばしばあったのだが、その思いが決定的になったのはハリウッドでCGアニメ化されることになった「鉄腕アトム」のキャラクターデザインを見たときである。アトムの外観は既に少年に非ず。それどころか見方によってはおっさ・・・いや、すでに成人しているようにも見えるのだ。手塚プロ側が異議を申し立てたことで現在は幾度かの修正が加えられ少しはましになっているみたいだが、CMを見る限りやはり多少の違和感は否めない。手塚がアトムの可愛らしさに拘っていたことなど、ハリウッド側にしてみても十分承知であろうにどうしてかくの如きおっさん化したアトムが完成してしまうのか。不思議でならなかったが、それはやはり日本人とアメリカ人の“可愛らしさ”に対する感覚の違いだろうということにして納得するしかない。

そしてこの様に、アメリカ人の“萌え”の感覚に対して疑問を感じつつあった時期であるだけに、この“ウォーリー”は、僕にアメリカへの信頼を取り戻させるとともに、今まで海外のアニメでは感じ取ることの出来なかった新鮮な感動を僕にもたらした。

つまりはキャラクターが可愛らしいのである。そしてその可愛らしさは明らかにそれまでアメリカのアニメキャラクターが体現してきた可愛らしさとは異なっている。そもそもアニメーションにおいては特に“力”の象徴として描かれる傾向にあるロボットで純朴さやツンデレーション(ん?)を表現すること自体が新しいのではないかと思うが、その点を抜きにしてたとえこの2体が人間であると仮定しても新しいのではないのか、と思うくらい新しいのだ。(こんな恋愛模様人間で再現されたらクサくて見てられないかもしれないが)

要はイヴのようなキャラクターがこれまでの海外のアニメで存在したかという一点である。ツンデレだ!!・・・ツンデレが出てきたのだ。エンドロールのファミコンを意識したような遊び心にしても、そこには明らかに日本的なものの介入を見て取ることができる。このような精神的な形で日本文化がアメリカのアニメに立ち現れてくるのを目撃するのは、初めての体験だった。そしてこのようなキャラクターを完璧に再現してみせたという事実は、全てピクサーの表現力の豊かさを実証することになるだろう。ゴキブリさえも可愛らしく見えるのだからびっくりである。

全体的な印象としては“遊び心”の映画という感じであった。2001年のパロディーにしても小道具の印象的な使い方にしても、作り手の楽しそうな姿勢が観る側に有り余るくらい伝わってくる。このような映画は愛さずにはいられない。

(評価:★4)

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