酔っ払った市原隼人が上野樹里を抱きしめながら、「結婚してみっか、俺たち」と言う。もしもここで上野樹里が「うん」と言ったなら、たぶんきっと、あれよあれよと言う間に話が進んで、一年後には新婚生活を営んでいる二人の姿が見られた事だろうと予感する。

でも、上野樹里は「うん」と言わなかった。それどころか市原隼人を突き放した。彼女の心は千千に乱れていたであろう。「うん」と言いたい。でもあの時は、変なお見合いパーティでみじめな思いをした直後であり、自分が少なからず傷ついた事を彼は知っている。そんな同情みたいな気持ちでそんな事言われたくはないし、現に、自分を抱きしめながら彼は、「女を感じない」と言っているではないか。彼が好きだからこそ、この状況でプロポーズは受けたくない、そんな感情が彼女をあのような行動をさせてしまったのであろう。

若いっていい。

私なら「うん」と言ってしまいそう。